moon~満ちる日舞う少女~【下】
美「嘘。陸はそれを言い訳にしてるだけ。…たしかに陸が財前家の長男であることはどうやってたって変えられない。けどっ、陸はどうにかしようとしたの?月龍を離れたくないって、伝えたの?」
財前「…聞いてないよね」
美「陸…。…自分から動かないと、何も変わらないよ」
陸「………父さん、俺…まだあの学校に通いたい」
小さな声だった。けど、はっきり聞こえた。陸の意思が。
陸「俺、大切な仲間とまだいたいんだ!!だからっ東高校に通わせてくれっ!!!」
ガバッと陸が頭を下げた。「私からもお願いします!」と私も一緒に頭を下げる。
財前「いいよ」
陸・美「「へ?」」
財前「なに変な顔してるんだ?…いいと言ったんだが」
陸「え…本当に?…いいのか?!」
財前「お前は本当に、自分の気持ちを伝えるのが下手だ。…お前がもしまだ通いたいといえば私はいいよと言うつもりだった。…なのにお前は何も言わなかった。どう思っていたかはわかっていたけど、言わなかった」
陸「…っ」
なんだ。そういうことか…。
財前「仲間を大切にしなさい」
陸「…はいっ…」