moon~満ちる日舞う少女~【下】
美「帝王は出来て二ヶ月くらいの族だと聞いた。…何をした…」
市「いえいえなにも、卑怯な手など使っておりませんよ。…ただうちが強かった。それだけです」
確かに、こいつからは尋常じゃないほどの危険信号を感じる。
市「一応言っておきますが、ここまで昇ってくるのに、幹部以上は一切手を貸していません」
美「…全部下っ端がやったって?」
市「はい」
19位にまだ昇るのを、下っ端のみでやったなんて…下っ端も相当強いのか…
市「あ、でもっ…聞いているかも知れませんが、この街の不良がいないのは、うちの幹部の1人がやっちゃったせいかもしれません」
…っ。…モデル体型のスラッとしたやつってそいつのことか。
美「ッチ」
市「そんなに殺気立たないでください。…私は今日あなたにお話が合ってきただけなんですから」
美「話…ねぇ。………なんだ」
市「あなた…舞月さんは帝王に入る気はないですか」
美「…は?…ははっ、そんなの入るわけねぇだろ」
市「…よろしいので?」
美「あぁ。私の居場所は夜舞だけだからな」
市「そうですか…。…まぁまたいずれ会うでしょう。その時にまたお誘いします」
美「だから入らないって…」
市「もしかしたら次会うのは、夏目美月さんではなく、大鳥美月さんかもしれませんけどね」
ーっ?!…なんでこいつ…その情報を知ってるんだ…っ
市「私はハッカーです。…あなたの情報の一部くらい抜けなくてどうしますか。…まぁ、抜けたのはあなたの名前くらいですが。それだけで全て組み合わせて、あなたの正体を導き出しました。」
こいつ、頭がきれる。
美「だから月龍を狙うって?」
市「まぁ、理由はそれだけじゃないですけど。…では、また」
もう来るな、そう言おうと思ったら歩き始めていた市川が振り返った。