moon~満ちる日舞う少女~【下】
それからいつものように、授業が始まった。
ノートを簡単に取りながら外を眺めたりしていた時に、机の中に入れていた携帯が震えた。
……香月?
香《帝王のこと知ってたんだろ?》
美《うん》
香《教えてくれれば良かったのに》
美《ごめんね。昨日言おうと思ったんだとけど》
香《……姉ちゃんはどこへも行かないよな……?》
携帯を持つ手に力がこもる。
美《行かないよ》
ーお姉ちゃんだけは、どこへもー
その意味を知るのは、私と…ごく1部だけ。
香《約束だからな》
香月の思い出していない記憶と、本能的な約束。それに少し寂しさを感じて《約束》と打ち返した。