moon~満ちる日舞う少女~【下】
亮「まさか僕についてきてくれるなんて思ってませんでしたよ」
ここは鑑賞室。…だから絶対音漏れしない。
美「で、話って?」
亮「あなたのことです。…どうして裏切ったんですか?」
美「飽きたからよ」
亮「本当に?」
美「本当に」
亮「…僕。実は人を見る目が少々ありまして。嘘を見抜けたりするんですよね」
美「…だから私が嘘を言ってるって?」
亮「いえ。少なくとも僕には、美月さんが嘘をついているようには見えません。……ですが、修也たちと笑っていた美月さんの目にも嘘はなかった。…矛盾してませんか?」
おもしろい。亮は頭がいいのに、その眼にたよってばかりで目でみたものは信用しないの?
矛盾?まさかっ!してないでしょ。亮は気づいていない。…私が亮の観察眼よりも、演技が上手いってことに。つまり、見抜けていないってこと。
美「…亮は、どうして月龍にいるの?」
ごめんけど、闇に落ちてもらうよ。
亮「その質問に答える必要ありますか?」
美「私を見てたってことは、亮自身は笑ってないってことだよね?」
亮「ーっ」
美「亮は、私と一緒でつまらないと思ってるんでしょう?」
亮「はは、何を言ってるんですか僕は…」
美「絵空事に包まれた空間に、自分だけ取り残されている感覚」
亮「そんな…ことは…っ」
美「亮はあるはず」
亮「な、にが…」
私は亮の心臓あたりに指をトンっとつついた。
美「死の感覚が」