恋はミステリー~会社編~
なかなか資料が見つからなかったので増田くんから見たみんなの印象を一通り聞くことが出来た。
加賀部長はとにかく優しい。
増田くんの予想では長男なんだそうだ。
上に兄弟がいる感じがしないんだって。
なにその野生の勘。
「部長が兄貴だったら良かったのに」と言っていた。
増田くんの年の離れたお兄さんはどんな人なんだろうか。
部長はああ見えてお酒がそんなに強くないんだとか。
実はこの間の飲み会の時に偶然何かを見てしまったらしい。
何があったのかは頑なに口を割らなかったが、男子トイレで何かがあったというのは間違いないようだ。
気になる。
清水さんは特に女性に優しいけどだからと言って男の子に厳しい訳でもないらしい。
ちょっと悪いことを教えてくれる面白い先輩だと増田くんは慕っているようだった。
私としては清水さんにはなるべくなつかないでほしいなぁと思っている。
まだ高橋の方が先輩としてマシなんじゃないだろうか。
どうも清水さんはチャラいイメージが拭えない。
とはいえほどほどな適当さの割りに仕事はキッチリこなす、要領の良さが社内でズバ抜けている。
プライベートも要領が良いのか恋愛絡みの情報は一切入ってこない。
なんだかんだはぐらかされるというか自分のことはあまり語らないらしい。
水面下でチャラついてるのかしら。
高橋はさっきも言っていた通り、壁がありよく分からないそうだ。
でもバリバリ働く姿は男から見てもカッコいいらしい。
きっと高橋は面倒見が悪いんだろうな。
自分の仕事に全力投球って感じ。
そろそろ下を上手く使えるようにならないといけないよね。
自分でやった方が早いだろうけど、作業を分担していかないと自分が抱えられる案件のキャパが広がらないでしょうに。
まったく、人のこと言えないけど。
山下くんは水族館が好きらしい。
甘いものを食べる時に一回連れてってもらったのだが、増田くんがはしゃいでいっぱい質問したり寿司の話ばっかりしてたらそれっきり水族館には連れてって貰えなくなったそうだ。
私には無表情に見えるが増田くんには山下くんの表情が分かるんだって。
まるで親友……っていうか恋人みたいだな。
なんだろう。それもそれで悪くないっていうか……
妙な胸の高鳴りと興奮を覚えた。
うん。悪くない。
増田くんは他の人のこともごちゃごちゃ言ってたけど一瞬で興味が失せてしまいほとんど聞き流していた。
まじで資料ないな。
上の方に積まれたダンボールに手をかける。
グラリと視界の揺れを感じステップの上に乗せた足への変な違和感に汗がドッと吹き出す。
やば───
急に周囲がスローモーションに見えた。
バサバサと舞う紙がゆっくり落ちていく。
増田くんが何か言ったような声のようなものに耳が支配される。
きっとこれは一瞬の出来事なんだろうな。
がたがたっ───
『うっ……痛……』
バサバサバサ
衝撃に備え固く閉じられていた目をゆっくり開く。
『く……ない……?』
『だいじょぶっすか……?』
『ぁ……はぃ……』
『良かった…!』
来るはずの衝撃は無く、代わりに柔らかくない温もりに包まれていた。
あったかい───
何が起きたのか理解するまでに少し時間が掛かってしまった。
ステップから落ちた私がそのまま倒れるのを増田くんがすばやくキャッチしてくれた。
そして壁際にそっと囲いこみ落ちてくるダンボールから守ってくれたようだった。
なにその反射神経。
ほ、惚れてまうやろーーー!
加賀部長はとにかく優しい。
増田くんの予想では長男なんだそうだ。
上に兄弟がいる感じがしないんだって。
なにその野生の勘。
「部長が兄貴だったら良かったのに」と言っていた。
増田くんの年の離れたお兄さんはどんな人なんだろうか。
部長はああ見えてお酒がそんなに強くないんだとか。
実はこの間の飲み会の時に偶然何かを見てしまったらしい。
何があったのかは頑なに口を割らなかったが、男子トイレで何かがあったというのは間違いないようだ。
気になる。
清水さんは特に女性に優しいけどだからと言って男の子に厳しい訳でもないらしい。
ちょっと悪いことを教えてくれる面白い先輩だと増田くんは慕っているようだった。
私としては清水さんにはなるべくなつかないでほしいなぁと思っている。
まだ高橋の方が先輩としてマシなんじゃないだろうか。
どうも清水さんはチャラいイメージが拭えない。
とはいえほどほどな適当さの割りに仕事はキッチリこなす、要領の良さが社内でズバ抜けている。
プライベートも要領が良いのか恋愛絡みの情報は一切入ってこない。
なんだかんだはぐらかされるというか自分のことはあまり語らないらしい。
水面下でチャラついてるのかしら。
高橋はさっきも言っていた通り、壁がありよく分からないそうだ。
でもバリバリ働く姿は男から見てもカッコいいらしい。
きっと高橋は面倒見が悪いんだろうな。
自分の仕事に全力投球って感じ。
そろそろ下を上手く使えるようにならないといけないよね。
自分でやった方が早いだろうけど、作業を分担していかないと自分が抱えられる案件のキャパが広がらないでしょうに。
まったく、人のこと言えないけど。
山下くんは水族館が好きらしい。
甘いものを食べる時に一回連れてってもらったのだが、増田くんがはしゃいでいっぱい質問したり寿司の話ばっかりしてたらそれっきり水族館には連れてって貰えなくなったそうだ。
私には無表情に見えるが増田くんには山下くんの表情が分かるんだって。
まるで親友……っていうか恋人みたいだな。
なんだろう。それもそれで悪くないっていうか……
妙な胸の高鳴りと興奮を覚えた。
うん。悪くない。
増田くんは他の人のこともごちゃごちゃ言ってたけど一瞬で興味が失せてしまいほとんど聞き流していた。
まじで資料ないな。
上の方に積まれたダンボールに手をかける。
グラリと視界の揺れを感じステップの上に乗せた足への変な違和感に汗がドッと吹き出す。
やば───
急に周囲がスローモーションに見えた。
バサバサと舞う紙がゆっくり落ちていく。
増田くんが何か言ったような声のようなものに耳が支配される。
きっとこれは一瞬の出来事なんだろうな。
がたがたっ───
『うっ……痛……』
バサバサバサ
衝撃に備え固く閉じられていた目をゆっくり開く。
『く……ない……?』
『だいじょぶっすか……?』
『ぁ……はぃ……』
『良かった…!』
来るはずの衝撃は無く、代わりに柔らかくない温もりに包まれていた。
あったかい───
何が起きたのか理解するまでに少し時間が掛かってしまった。
ステップから落ちた私がそのまま倒れるのを増田くんがすばやくキャッチしてくれた。
そして壁際にそっと囲いこみ落ちてくるダンボールから守ってくれたようだった。
なにその反射神経。
ほ、惚れてまうやろーーー!