赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「シェリーは可憐なようで強い女だ」
「そんな私は、お嫌いでしょうか」
「いいや、俺はそこが気に入っている」
スヴェンの体がさらに近づいて、額から瞼、頬から顎の順に口づけられる。最後に唇に触れようとして、動きを止めたスヴェンと至近距離で見つめ合った。
「愛している、シェリー。明日も明後日も共に時を刻んでいこう。だからこれはお前を守り、俺自身も死なずに決着をつけるという誓いだ」
「うれしいです、スヴェン様。私も必ず生きて、あなたのお側を離れないと誓います」
誓いの言葉と共に口づけを交わす。彼に応えるように薄く口を開けば、荒々しく侵入してくる熱を愛しく思った。
「っ、シェリーは美しい、な」
絹のような柔肌に手を這わせ、スヴェンは吐息交じりに生まれたままのシェリー姿をじっと目に焼き付ける。
その視線をくすぐったそうにして目を伏せる仕草さえ、スヴェンの体を熱くさせた。
「あなた、は……傷が、たくさん」
息を乱しながら、スヴェンの鍛え上げられた胸板に手で触れる。そこは瘢痕化した傷痕がいくつもあり、痛々しいほどにでこぼこしている。
「俺は騎士だからな、戦場に出たての頃はよく怪我をした。醜いだろう?」
「いいえ、あなたの生きた証だもの。愛しいわ」
少しだけ体を起こして、彼の胸元の傷に口づけをする。すると、息を詰まらせたスヴェンが「――っ、シェリー」と掠れた声で名前を呼ぶと、シェリーの中へ押し入る。
「ああっ、スヴェン様っ」
ギュッと目を閉じて痛みに耐えると、スヴェンは苦しげにシェリーの首筋に顔を埋めた。
「……っ、すまない、愛しくてたまらなくなった」
必死に動くのを我慢している様子のスヴェンに、自分を大事にしようとしてくれているのがわかり、思わず笑みをこぼす。
こんなにも誰かを愛しいと感じたのは、生まれて初めてだ。こんなに素晴らしい感情を教えてくれた彼に、なにかを返したい。そんな強い衝動に駆られて、シェリーはスヴェンの鮮やかな赤髪を優しく撫でる。
「あなたにすべて捧げると、言ったではありませんか」
「シェリー?」
体を起こして不思議そうに顔を覗き込んでくるスヴェンに、シェリーはにっこりと笑って見せた。