赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「シェリー、待たせたな」
夕暮れが青薔薇を赤く染める中、声をかけられて振り返る。そこに立っていたのは、沈んでいく太陽よりも赤く燃えているガーネットの瞳と髪の騎士がいた。
「スヴェン様、お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
側にやってきたスヴェンが離れていた時間を埋めるようにシェリー腰を引き寄せ、空いた方の手で髪を梳く。
髪に触れる手が心地よくて目を細めていると「シェリーに話したいことがある」と言われた。
「はい、なんでしょう」
やけに真剣な口調だったので、不思議に思いながら顔を上げる。スヴェンの瞳の中に自分の姿が映っているのがわかる距離で、スヴェンと見つめ合った。
「シェリー・ローズ」
側にあったはずの温もりが離れると、スヴェンは胸に手を当てて目の前に跪く。その仕草があまりにも美しくて、シェリーは目を奪われていた。
「この身も心も、すべてお前に捧ぐ。だからシェリー、これからの人生を俺と共に歩んでくれないだろうか」
「スヴェン様……」
これはもしかしてと期待が込みあげてきて、心臓がトクトクと早く鳴る。
むせ返るような薔薇の匂いに包まれて、どうか願望だけで終わりませんようにと彼の言葉を待つ。
「俺と結婚してくれ」
「――っ、スヴェン様!」
たまらず、跪いているスヴェンの首に抱き着いた。淑女としてははしたない行為だとは思うけれど、愛しさが溢れてきて我慢できなかったのだ。
「愛しています、心から。あなたの妻になりたい」
「これで、お前は俺のものだな」
スヴェンはうれしそうに、シェリーを強く抱き込む。彼から香しい薔薇の香りがして、帰る場所を見つけたような安心感に包まれた。
「お前を生涯愛し守り抜く」
誓うように口づけられ、シェリーは幸福感に満たされながらそっと目を閉じた。