赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「アルファス様が学舎の設立を議会で提案したんだがな、シェリーのように学のある教師がいないことを問題視されて案がなかなか通らない」
アルファスが議会でも積極的に意見するようになったのは、カヴァネスの仕事で城を訪れた際にウォンシャー公爵から聞いていた。
アルファスが絶対に成功させるのだと意気込んでいたので応援していたのだけれど、うまくいってないのなら落胆しているに違いない。
でも、アルファス様はさっそく誰もが活躍できる国を創ろうとしている。簡単にはいかないからこそ、人はたくさん考えて知恵を身に着けていくのだ。
どの経験も未来の武器になり得ると信じて、彼には今を踏ん張ってほしい。そのためにカヴァネスとして、アルファスを支えようと改めて思った。
それにしても、今まで恥さらしと白い目で見られ続けたカヴァネスが人数不足を問題視されるほど必要とされる日が来るだなんて思ってもみなかった。
どこか感傷深くなりながら、国を変える一歩を歩みだしたアルファスを誇らしく思う。
アルファスのためにも、なにかいい案はないかと思考を巡らせた。
「教師不足……そもそもカヴァネスは私のように絶家した貴族の娘がなる職ですので人数は少ないのです。まずは教師を育てる制度が必要では?」
「なるほど、いきなり学舎は飛翔していたかもしれん。まずは教育の土台を作る必要があるのかもな」
「もしくは実習という形ですでにカヴァネスとして働いている者について回り、体験から学ぶことも視野に入れてはどうでしょうか」
いきなりカヴァネスの教育体制を整えるのは難しいので、そういった土台ができるまでは経験者に学ぶ方法を取ればいい。
シェリーもかつてはカヴァネスから教養を学んだので、従来のやり方を進化させれば人材は育つ。