赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「それも大事な資源ですが、陛下のおっしゃる地位やお金はなにから生み出されますか?」
「うーん、わからないよ」
「人です、陛下。あなたが国王として君臨できるのはスヴェン様や大臣、騎士や使用人の方々が支えてくださっているからなのです」
その両肩に手を乗せ、ゆっくりと腰を折る。シェリーの眼差しが優しくなったのに気づいて、アルファスも体の力を抜いた。
彼とは王族として一歩を置くよりも、普段生徒たちに接しているようにまっすぐぶつからなくてはいけないのかもしれない。
彼がちゃんと人の話を聞けるような相手になること、それが自分の役目だと思ったシェリーはアルファスの瞳をじっと見つめ返して口を開く。
「強くなりたいのでは、ないのですか?」
「なりたいけど……」
「けど? そのような生半可な覚悟で、私をカヴァネスにしたのでしょうか」
シェリーの目が鋭く光るのを見たアルファスはビクリと肩を震わせ、慌てて頭を振る。
「ち、違う! 僕は本気だ!」
「でしたら、あなた様が守るべき者にした仕打ちを謝罪してくださいませ」
「わ、悪かったよ……セデオ大臣」
ペコリと頭を下げるアルファスに、セデオ大臣もホッとした顔をする。そしてどこからともなく、拍手が巻き起こった。
「ヒヤヒヤしましたが、セデオ大臣の首が飛ばなくて安心しましたな」
「あの陛下を説得するなんて、今回は期待できるかもしれませんね」
周りの大臣や騎士たちから、喝采が飛び交う。
場もわきまず、やりすぎただろうか。反省しているシェリーの肩にスヴェンの手が乗り、「こちらに来い」と耳打ちされた。
アルファスと顔を見合わせて一緒に謁見の間を出ると、前を歩いていたスヴェンが廊下の途中で足を止める。
無礼を働いたことを咎められるのだろう。覚悟を決めてそのときを待っていると、あろうことか彼はぶはっと盛大に吹き出した。