赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う


「アルファス様、稽古が終わっていませんから」

「息抜きだ! 戻ってきたらちゃんとやるから、僕も行く!」


 宥めてはみたものの頑として譲らないアルファスに困り果てたシェリーは、スヴェンの腕を軽く引いて壁際に寄ると緊急会議を開くことにした。


「この様子では、私がなんと言おうと聞かないでしょう」

「シェリーで駄目なら、他の誰が説得したとしても無理だろうな」


 ヒソヒソと話しながら、同時にアルファスに視線を向ける。


「なにを言われても、僕の考えは変わらないからな!」


 といったふうに、念を押されてしまった。


「スヴェン様、こたびの調査はその……朝のことと関係がおありですか?」

「あぁ、品種から薔薇の出どころを探し出し、犯人の特定を急ぐよう議会で俺に命がくだった」

「では、アルファス様を連れて行くのは危険でしょうか?」


 そんなの聞くまでもなく危険には違いないのだが、アルファスの頭の中にはイエス以外の答えはきっとないだろう。

なんとしてでもついて行こうとして、逆に危険な行動をとりかねない。ならいっそ、連れて行って目の届くところにいてくれたほうが安全ではないだろうか。


「城も安全とは言い難い、側に置いておくほうが俺も安心できる」


 スヴェンも同意見だったらしく、考えた末に出した結論は――。


「あくまでの仕事に行くんですからね。同行は認めますが、勝手な行動はとらないように」


 期待いっぱいに瞳を輝かせるアルファスに苦笑しながら、スヴェンが忠告をする。


< 31 / 135 >

この作品をシェア

pagetop