赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「シェリー、俺の前では気丈に振る舞おうとしなくていい」
月の光のように柔らかい眼差しを向けられて、「え?」と聞き返す。するとスヴェンは、シェリーの頬に手を添えて続けた。
「ずっとひとりで頑張ってきたお前は生きるためにカヴァネスとなり、子供たちの未来のために強く在ろうとする。それは美徳ではあるが、シェリーは女だろう。これからは俺に守られ、愛でらていろ」
「スヴェン様は……ずるいです」
また、目の奥からなにかがこみ上げてくる。
泣いてしまいそうになって俯けば、彼は「ずるい?」と顔を覗き込むようにして聞き返してきた。
泣かまいと顔の筋肉に力を入れてみたけれど、押し寄せてくる感情の波に歪んでしまう。それでもなにか答えなければ、と震える唇を動かす。
「そんなこと言われたら……また、泣いてしまうではないですか」
「なら思う存分、泣けばいい」
力強い腕が背中と腰に回り、引き寄せられるとシェリーのブルーゾイサイトの瞳からポロポロと涙が溢れる。
甘えるように鍛え上げられた硬い胸板に顔を埋めれば、スヴェンはシェリーの後頭部を胸に軽く押しつけるようにして泣くことを許してくれた。