赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う


「シェリー、しっかりしろ!」


 そこへスヴェンが駆け寄ってきて、動揺しているアルファスの腕からシェリーの体を受け取る。

 ぐったりとしたシェリーは横抱きにされながら、スヴェンの顔を弱弱しく見上げた。


「ご迷惑、を……申し訳、ありま……」

「迷惑など、そのようなことはどうでもいい! なぜお前は、無茶ばかりするのだ!」


 このように取り乱すスヴェンを見るのは、初めてだった。それがうれしくて、こんな状況だというのに口元が綻んでしまう。


「私のこと……より、前王妃様のそばに……。きっと、不安がって……います。私なら大丈……夫、です、から」

「――っ、俺は誰よりも、お前の側にいたいのだ。言っただろう、好いていると!」

「スヴェン、様……」


 その言葉はうれしい。彼の必死の形相から、自分を心から好いてくれているのが伝わってくるから。

 けれど、さきほどから手先の感覚がなくなってきている。大丈夫とは言ったものの、思った以上に出血しているのかもしれない。


(この人を置いて逝きたくない。でも、もし……このまま死んでしまうのだとしたら、ちゃんと自分の気持ちだけは伝えたい)


 今、告白の返事をしなければ後悔する。
 そう思ったシェリーは彼の頬に手を伸ばして震える唇を動かした。


「ずっと、言えなくて……ごめんなさい。私もあなたが……好き」


 それを伝えるだけで、限界だった。ふっと体から力が抜けて、スヴェンの頬に触れていたシェリーの手は力なく落ちる。

 重い瞼を閉じれば、「シェリー?」という絶望を滲ませた彼の声が聞こえた気がした。


***


「しっかりしろ、シェリー!」


 固く目を閉じているシェリーの体を揺するも、反応がみられない。血の気が失せていくのを感じながら、その顔を手で撫でた。


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