赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「城では君たちが逃亡した後、その罪を問う議会が行われたよ。ただ、此度のことは不明点も多く、まともな調査も行われないまま国王陛下を投獄した件について、俺が意見する前に他の公爵たちから決議の延期の声が上がった」
「ということは、大公殿下の息がかかった公爵はいないということだな。単独で王位を狙っているのか?」
スヴェンの口から大公の名前が出た途端、隣に座るアルファスの肩がビクリと跳ねた。シェリーはそっとその肩を抱き寄せる。
叔父である大公殿下の意裏切りに胸を痛めているのだろう。血縁者であろうと地位のためにここまで非道になれる大公殿下の考えを理解できなかった。
ウォンシャー公爵はちらりとアルファスに気遣うような視線を向ける。
「正確には秘密裏にルゴーンを使って、王位を狙っていたことになるね。それで、国王陛下には前王の死について全部話したのかい?」
それにスヴェンは苦い顔をする。
前国王毒殺に関しては断言できる証拠がなかったために疑惑の段階でアルファスに事実を伝えるのは衝撃が強すぎるとのことで、話せてはいなかった。
(スヴェン様は、どうされるのかしら)
胃を固く締め付けられるような不安を抱きながら、判断を仰ぐようにスヴェンを見つめると目が合う。
彼も決めかねているのか、難しい顔でじっと沈黙を貫いていると。
「話してくれ、スヴェン」
腹を据えたかのようにはっきりと告げたのは、当事者であるアルファスだった。
その場にいた全員が、彼の声に宿る堅い意志に息を呑む。黙り込むシェリーたちの顔を見渡して、アルファスは懇願するように言う。
「国王はお前たち公爵もシェリーのような民も守るのが役目だ。だから、俺を守るための嘘はいらない。どんな事実も受け入れて、立ち向かっていくから」
「アルファス様……そうか、あなたは知らぬ間にそこまで成長しておられたのですね。さすが、この俺が使える王だ」
スヴェンは国王を眩しそうに見つめると、ウォンシャー公爵に目配せをする。それは全て話そう、という互いの意思確認のようにも見えた。
ウォンシャー公爵はうなづいて、アルファスに報告をする。