僕の妻は理解不能
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「愛菜、この先には海外の人が沢山いるんだよ!」
「はるちゃん、どうしたの?
テンション高くない?」
はるちゃんはにっこり笑って
海の先を見ていた。
「愛菜、私たちはまだ20歳だよ。
一分1年として、60分ドラマで言ったら丁度人物の紹介をおえたあたり。
これからたくさんのものを見て、たくさんの経験して生きていくんだよね。」
愛菜にそう話すはるちゃんは少し涙ぐんでいた。
僕と拓翔くんは少し後ろから様子を見て話を聞いていた。
すると、はるちゃんは息をすぅっと吸い込んで
「人生の前半で愛菜と出会ってよかった!!」
と海に向かって叫んだ。
僕は少し驚いた。
いきなりすぎたからだ。
夕日を見ると叫びたくなるのは
ドラマの中の話。現実にいるなんて…
でも、それほど愛菜を思っているなんてとても嬉しくなった。
「愛菜、だからさ….」
はるちゃんは愛菜の耳元で何かを囁いていた。
不思議だったけど
はるちゃんが耳元から離れた時
愛菜は泣いていた。
10個も下の女の子達が笑って泣いている。
夕日がより一層涙の存在を明らかにしていった。
「春奈も愛菜ちゃんもさ
俺たちみたいに恵まれてなかったんだとおもうんだよな。
母親も父親もいて当たり前。
その"普通"が普通じゃなかったんだよね。」
拓翔くんの言いたいことはよく分かった。
煩わしいと思っても、存在だけで少し安心する親。
不自由なく育ててもらった環境。
2人は人よりも苦しい家庭環境だったから
たくさんの苦労をしているはず。
もちろん、2人で乗り越えた試練も経験も沢山あるはず。
「それに、愛菜ちゃんも
学生時代の時のことなかなか話してくれないでしょ?」
「まぁ…。え、も、ってことは
はるちゃんも?」
「春奈も話したがらない。
不思議だったけど、今笑ってくれるなら別にいいやって思ったんだよね。」
「この笑顔を守りたい。」
僕の不意打ちな一言に
拓翔くんはゲラゲラ笑った。
「ちょっと!恭也くん!何それ!!」
「い、いや、僕は本心なんだよ!!」
「まぁ、分かるけどね!」
時間は早くもう既に
薄暗くなっていた。
眩しい夕日も半分以上落ちていた。
そろそろ旅館に移動しようと言って
バス停の時間を拓翔くんは見に行ってくれた。
「愛菜!はるちゃん!
泣き止んだかな?」
僕はさっきの60分ドラマの話が気になった。
「そーいえば、はるちゃん、
さっきの話だと、60歳で人生終わりなことになってるよ?」
「確かに…そうですね…」
困るはるちゃんの隣で
愛菜はニヤニヤと笑っていた。
「恭也さん、60分ドラマが終わったら
スペシャルドラマで延長ですよ!」
そう言ってハニカム愛菜は
目尻が少し赤くなっていた。
こすったのかな?と思った。
時刻表を見てくれた拓翔くんが戻ってきた。
「ごめん!もうバスない!
だから、タクシー呼んだから、もう少し待ってて!」
はるちゃんが嬉しそうに
「じゃあ、もう少しだけ夕日を見ながらお話してよう!愛菜!」
愛菜の手を引っ張り崖際の柵まで戻った。
「こういうところに救われるんだよね」
そう拓翔くんは呟いた。
「え?どういうこと?」
「バスがないことを怒るわけではなく
その時間を違うことに使おうってさ」
なるほどと思った。
愛菜も同じようなところがある。
若さなのか、性格なのか分からないが
そんな愛菜が大好きなことは変わりない。