僕の妻は理解不能
辺りは既に真っ暗で灯台の明かりと
道路に並ぶ街灯の明かりだけだった。
海に近いここは
街の灯りは無く、人の気配もなかった。
鈴虫は風のように音を奏でて
海の匂いが冷たい風と一緒に来て
さっきまで夕日で眩しかった空は
輝きいっぱいの星空に変わっていた。
僕達は地べたに4人で並んで座って
この気持ちよく涼しい夏のはじまりを感じていた。
まぁ、感じていたのは
僕と拓翔くんだけで…
「愛菜は結婚してどうだった?
1年経ったけど!」
「毎日、楽しいよりか….
毎日発見なの!私は知らないことばかりで
恭也さんはなんでも知ってるから、色々教えてくれるんだよ!」
「いいねぇ!やっぱり結婚は憧れだよねー!」
僕達がいるのに構わず
ガールズトークというものしていた。
それでもいい。
愛菜の隣でこの星空を見たことは僕の宝物だ。
左にいる愛菜を見ていると
その先にいる拓翔くんが目に入った。
拓翔くんは右にいるはるちゃんをらずっと
見つめていた。
すごく幸せそうに。
夜空とはるちゃんを交互に見ていた。
僕と同じだ。
ガールズトークする2人の端には
その2人を愛おしく思う2人。
本当に僕達は似ているんだな。
星空を見ていたら
車が止まる音がした。
後ろを振り返るとタクシーが止まっていた。
「タクシー来たみたいだよ」
僕がそう声をかけて
名残惜しいこの景色とお別れをして
僕達は旅館へ向かった。