言い訳~blanc noir~
「やっぱりこのクロの写真が良かったんですよ」


「そ、そっか。良かったね。毛玉さんと仲良くなれて」


「はい!! 毛玉さんにコメントのお礼に行かなくちゃ」


 しかしなぜこの人は“毛玉”というハンドルネームにしたのだろう。

 そんな事を思いながら歯ブラシを手に取る。


 この日から沙織の日課は“今日の手紙”とブログ更新になったようだ。

 仕事の途中、沙織のブログを閲覧すると更新されている事が多く、それが和樹の楽しみになっていた。


 沙織が拗ねないよう、わざわざコメントを書き込まなくても、毛玉ともすっかり仲良くなった沙織は猫の話題で盛り上がっている。


 最近は猫の話題だけではなく、ちょっとした世間話だったり、沙織が結婚を控えている事など、いわゆるガールズトークも交わすようになったようだ。

 毛玉は「素敵ですね。さおりちゃんとご主人様は私の憧れです」といつもコメントしていた。

 年齢的には沙織より年下の女性のようだった。

 友達がいない沙織にとって、唯一心を許せる存在が毛玉なのかもしれない。

 どこの地で暮らし、どういう女性なのか、また何歳なのか、そういった詳細はわからないが、それでも沙織に友達ができた事は、和樹にとって嬉しかった。


 沙織と毛玉のやり取りのなかに割り込むのは、少々気が引けるが、でも和樹はいつも沙織にコメントをする。

 


『さおりちゃんへ


いつも美味しいご飯ありがとう。


今夜も楽しみにしています。


かずきくん』
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