言い訳~blanc noir~
ストレッチャーの上に静かに寝かされた見知らぬ人がいた。
白いシーツを胸元まで掛けられている。
それが誰なのか認識ができないほど顔面は包帯で覆われ、黒髪に血のようなものがこびりついていた。
外されたばかりの酸素マスクやそれが何の医療器具なのかわからないが、ストレッチャーの横に無造作に置かれたままだった。
和樹は呼吸する事さえ忘れてしまったかのように呆然とその場に立ち尽くしていた。
「……なんだよこれ」
和樹の掠れた声が室内に響く。
いつの間にか背後に佐原と医者が立っていた。
「病院に運ばれてきたときには既に」
「そんな事どうでもいいですから……沙織を、沙織を起こしてください!! あなた医者なんですよね!? 沙織を……沙織を助けてください!! お願いします、沙織を―――」
和樹が医者の肩を激しく揺さぶると佐原に羽交い絞めにされ、そのまま後ろに引き離されてしまった。
「椎名、やめるんだ」
「なんなんだよこれ!! 誰だよ、そこにいるの!? 誰なんだよ!?」
「椎名!!」
「何でだよ!? 何でこんな事になったんだよ!? 誰が沙織を殺したんだよ!?」
和樹が力を失ったようにその場にしゃがみ込むと佐原が和樹の背中をさすり続けた。
「詳しい事は……後で俺が説明する。とにかく椎名、気をしっかり持つんだ」
「―――沙織は死んだんですか?」
縋るような目で和樹が佐原を見つめた。
佐原は眉間に深い皺を刻み、そして、静かに頷いた。
「―――俺、明日からどうやって生きていけばいいんですか? 佐原さん、明日から……俺は」
「椎名。俺もいる。他の仲間もいる。お前は一人じゃない。全力でサポートする。だから気をしっかり持つんだ」
佐原の声さえまともに耳に入らない。
視線をストレッチャーに向けた和樹が力なく呟いた。
「―――沙織と二人だけにしてください」
白いシーツを胸元まで掛けられている。
それが誰なのか認識ができないほど顔面は包帯で覆われ、黒髪に血のようなものがこびりついていた。
外されたばかりの酸素マスクやそれが何の医療器具なのかわからないが、ストレッチャーの横に無造作に置かれたままだった。
和樹は呼吸する事さえ忘れてしまったかのように呆然とその場に立ち尽くしていた。
「……なんだよこれ」
和樹の掠れた声が室内に響く。
いつの間にか背後に佐原と医者が立っていた。
「病院に運ばれてきたときには既に」
「そんな事どうでもいいですから……沙織を、沙織を起こしてください!! あなた医者なんですよね!? 沙織を……沙織を助けてください!! お願いします、沙織を―――」
和樹が医者の肩を激しく揺さぶると佐原に羽交い絞めにされ、そのまま後ろに引き離されてしまった。
「椎名、やめるんだ」
「なんなんだよこれ!! 誰だよ、そこにいるの!? 誰なんだよ!?」
「椎名!!」
「何でだよ!? 何でこんな事になったんだよ!? 誰が沙織を殺したんだよ!?」
和樹が力を失ったようにその場にしゃがみ込むと佐原が和樹の背中をさすり続けた。
「詳しい事は……後で俺が説明する。とにかく椎名、気をしっかり持つんだ」
「―――沙織は死んだんですか?」
縋るような目で和樹が佐原を見つめた。
佐原は眉間に深い皺を刻み、そして、静かに頷いた。
「―――俺、明日からどうやって生きていけばいいんですか? 佐原さん、明日から……俺は」
「椎名。俺もいる。他の仲間もいる。お前は一人じゃない。全力でサポートする。だから気をしっかり持つんだ」
佐原の声さえまともに耳に入らない。
視線をストレッチャーに向けた和樹が力なく呟いた。
「―――沙織と二人だけにしてください」