言い訳~blanc noir~
 どれくらい時間が経ったのだろうか。

 インターホンの音が部屋に鳴り響いた。

 沙織の部屋の照明を落とし、足早にリビングに向かう。テレビドアフォンで来客を確認すると古賀の姿が映っていた。


「古賀さん?」

「あ、こんばんは」

 和樹がオートロックを解除するとすぐに古賀が玄関前にやって来た。


「突然すみません」

「どうしたの」

「お弁当作って来たんです。良かったら食べてください」

 そう言って古賀が紙袋を差し出した。

「……ありがとう」

「椎名さん、痩せましたね……ご飯食べてますか?」

「それなりに食べてるけど、なかなかね。胃が小さくなってるのかな」

「……何て言っていいのかわかりませんけど、早く元気になってくださいね」

 和樹は力なく笑みを浮かべ頷いた。


「じゃあ。私帰ります」

「お茶でも飲んで帰って。ちょっと仕事の話も聞きたいし」


 なぜこの時古賀を呼び止めたのか自分でもわからなかった。

 ただ、一人でいる事が耐え難く、誰でもいいから人の温もりが欲しかったのかもしれない。
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