言い訳~blanc noir~
―――自動車運転過失致死傷罪。
加害者であるトラック運転手の男に課せられた罪名だ。
何度も何度も謝罪の申し入れを受けたが、一度会ったきり、その後は断り続けた。沙織を殺した男の顔など見たくもなければ謝罪の言葉が欲しいわけでもない。
これ以上関わり合いたいとも思わない。
全て警察と保険屋に任せていた。
今朝10時過ぎ、インターホンが鳴りオートロックを解除すると花が届いた。
加害者の家族から沙織にと花屋が依頼されたらしい。
「結構です。お引き取りください」
持ち帰ってもらったが、和樹の胸には後味の悪さだけが残ってしまった。
そして昼過ぎ北署の石田から和樹に電話があり、事故当日、警察が持ち帰っていた沙織の遺品を受け取りに行った。
沙織がいつも持っていた布製のトートバッグに茶色く変色した血痕を見つけると包帯に巻かれた沙織の姿を思い出し、思わず目を背けてしまった。
一つ一つ、石田の目前で確認しながら遺品を袋から取り出す。
沙織の手帳に“ご主人様*沙織”とマジックで書かれた写真が挟まれていた。
遺影になっているあのウェディングドレス姿の写真だ。微笑む沙織の隣にタキシード姿の和樹が一緒に写っている。
まさかこの写真を遺影に使用する事になるとは夢にも思わなかった。
自然と手が震え出した。
すると石田が奥歯を噛みしめた様子で「ご結婚間近だったんですね」と呟くように言った。
はい、と言った和樹の声が消え入りそうだった。
沙織の遺品と共に帰宅し、トートバッグの中に携帯電話や手帳をしまうといつも沙織がしていたようにベッド横の床の上に無造作に置いた。
「沙織。手帳このバッグの中に入ってるからね」
なぜか今日は異様に気持ちが不安定だった。
加害者の家族から花が届いたせいなのか、沙織の遺品に触れたせいなのか、それとも自分の精神状態が本格的におかしくなっているのか。
とにかく一人でいる事が怖くて不安で仕方ない。
リビングに行き、テレビをつけ、クロを膝に乗せてみたが、自分がこの世にたった一人だけ取り残されてしまったかのような孤独感が和樹を襲う。
パソコンを立ち上げ、沙織のブログサイトにログインした。
加害者であるトラック運転手の男に課せられた罪名だ。
何度も何度も謝罪の申し入れを受けたが、一度会ったきり、その後は断り続けた。沙織を殺した男の顔など見たくもなければ謝罪の言葉が欲しいわけでもない。
これ以上関わり合いたいとも思わない。
全て警察と保険屋に任せていた。
今朝10時過ぎ、インターホンが鳴りオートロックを解除すると花が届いた。
加害者の家族から沙織にと花屋が依頼されたらしい。
「結構です。お引き取りください」
持ち帰ってもらったが、和樹の胸には後味の悪さだけが残ってしまった。
そして昼過ぎ北署の石田から和樹に電話があり、事故当日、警察が持ち帰っていた沙織の遺品を受け取りに行った。
沙織がいつも持っていた布製のトートバッグに茶色く変色した血痕を見つけると包帯に巻かれた沙織の姿を思い出し、思わず目を背けてしまった。
一つ一つ、石田の目前で確認しながら遺品を袋から取り出す。
沙織の手帳に“ご主人様*沙織”とマジックで書かれた写真が挟まれていた。
遺影になっているあのウェディングドレス姿の写真だ。微笑む沙織の隣にタキシード姿の和樹が一緒に写っている。
まさかこの写真を遺影に使用する事になるとは夢にも思わなかった。
自然と手が震え出した。
すると石田が奥歯を噛みしめた様子で「ご結婚間近だったんですね」と呟くように言った。
はい、と言った和樹の声が消え入りそうだった。
沙織の遺品と共に帰宅し、トートバッグの中に携帯電話や手帳をしまうといつも沙織がしていたようにベッド横の床の上に無造作に置いた。
「沙織。手帳このバッグの中に入ってるからね」
なぜか今日は異様に気持ちが不安定だった。
加害者の家族から花が届いたせいなのか、沙織の遺品に触れたせいなのか、それとも自分の精神状態が本格的におかしくなっているのか。
とにかく一人でいる事が怖くて不安で仕方ない。
リビングに行き、テレビをつけ、クロを膝に乗せてみたが、自分がこの世にたった一人だけ取り残されてしまったかのような孤独感が和樹を襲う。
パソコンを立ち上げ、沙織のブログサイトにログインした。