言い訳~blanc noir~
―――俺は何をしているんだ。なぜこんな事をしているんだ。


 頭の片隅で声がする。


「椎名さん、どうしたんですか……?」

 頭の声を追い払うかのように夏海の唇を塞いでいた。ゆっくりと二人の顔が引き離される。薄明りのなか、細く糸を引く唾液が光っていた。

 和樹の耳元に唇を寄せた夏海が囁く。

「いいですよ……私で良ければ」

 夏海が自ら唇を重ね、そして、舌先を絡めてきた。

 耳に纏わりつくような夏海の吐息や声。シーツに滲む汗も、ベッドが軋む音も、何もかもが夢と現実の狭間で起こっているようだった。

 何をしているんだ。

 俺は、何をしているんだ。

 和樹の頭に何度も声が響く。

 快楽が欲しかったわけでも、夏海を愛しているわけでもない。

 それなのに、俺は何をしているんだ―――
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