言い訳~blanc noir~
 沙織が死んで間もない頃「生まれ変わりがあるか」そんな話を夏海とした事があった。

 夏海は生まれ変わりはあると言い切り、それはどのスピリチュアル系の本にも書いてあると言っていた。

 その数日後、夏海が5冊ほど心霊学の本を持って来た。

 中にはメディアで話題になっている有名なスピリチュアルカウンセラーのものもあった。これまで死後の世界や生きるとは何か、そんなものに興味があったわけではないが、やはり沙織をあのような形で失った傷はかなり大きく何かに縋りたかった。

 例えそれが本であったとしても。

 夏海が持って来た5冊の本をたった2日で読み終えた。

 確かに「生まれ変わりはある」と全ての本に書かれていた。この世の出会いは偶然ではなく必然であるとも。

 それらの本は全て生きる希望を与えてくれるような優しい文章が綴られていた。

 あの時はそこに書いてある文章にほんのわずかだが希望のようなものを見出した。

 しかし今思う。

 そんな言葉を信じた自分が馬鹿だったと。

「私と椎名さんの出会いは偶然じゃなく必然」

「沙織さんは私に椎名さんの事を託したんだと思う」

「私と沙織さんはソウルメイト。私を愛す事が沙織さんの弔いになる」


 一瞬でもそんな言葉を信じた自分が憎い。

 信じる者は救われるどころか、信じる者は騙され馬鹿をみる。


 体の奥底から込み上げる激しい怒りにハンドルを握る手が震え奥歯を噛みしめた。
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