言い訳~blanc noir~
blanc noir
駅前のロータリーに車を滑り込ませ、クラクションを二度鳴らすとその音に気が付いた五十嵐 千尋が顔を上げた。
和樹の姿を確認するとまるで花が咲いたかのように顔を綻ばせ、胸元あたりで小さく手を振る。
グレージュカラーのアンサンブルスーツに身を包み、胸元にはパールのネックレスをあしらっていた。華やかさはあまり感じられないが、可憐で上品な雰囲気を放っている。
千尋が長い黒髪を揺らしながらこちらに駆け寄って来た。
すると突然姿が消えた―――。
「大丈夫ですか!?」
驚いた和樹が慌てて車からおり千尋の元へと回り込む。スカートに真っ黒なタイヤ痕のようなシミをつけ、ストッキングは裂かれたように伝線していた。
「椎名さん、すみません……」
千尋を抱き起すと、余程恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染めていた。
「怪我してませんか?」
「大丈夫です。でもひどい姿ですね、私」
よく見るとジャケットにも泥がはね、千尋の顔にもすすのようなものがついていた。
「椎名さん。これじゃデートに行けないです」
千尋はばつが悪そうな表情を浮かべて苦笑いする。
「とりあえず一度マンションまで送りますから着替えて来てください。僕、下で待ってますから」
そして車を走らせ千尋が一人暮らしをするマンションへと向かった。
「椎名さん。良かったら一緒に上がりませんか? もう私たち婚約しているんだからそろそろ部屋に上がるくらい……」
「それもそうですね」
嬉しそうに口角を上げた千尋が微笑んだ。
大阪に越して来てすぐの頃、千尋に出会った。
現在28歳の千尋は学生時代は東京で過ごし、その後は父親が経営する子会社で通訳と翻訳をしている。父親の名は東京にいる頃からもちろん知っていた。現在アメリカと日本を行き来し、メディアにも度々取り上げられるほどの実力者だ。
三代前から続く総合商社を営み、その他、資産運用、証券、不動産業など、多種多様な業界に精通している。
その娘である千尋との出会いはひょんな事からだった。
和樹の姿を確認するとまるで花が咲いたかのように顔を綻ばせ、胸元あたりで小さく手を振る。
グレージュカラーのアンサンブルスーツに身を包み、胸元にはパールのネックレスをあしらっていた。華やかさはあまり感じられないが、可憐で上品な雰囲気を放っている。
千尋が長い黒髪を揺らしながらこちらに駆け寄って来た。
すると突然姿が消えた―――。
「大丈夫ですか!?」
驚いた和樹が慌てて車からおり千尋の元へと回り込む。スカートに真っ黒なタイヤ痕のようなシミをつけ、ストッキングは裂かれたように伝線していた。
「椎名さん、すみません……」
千尋を抱き起すと、余程恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染めていた。
「怪我してませんか?」
「大丈夫です。でもひどい姿ですね、私」
よく見るとジャケットにも泥がはね、千尋の顔にもすすのようなものがついていた。
「椎名さん。これじゃデートに行けないです」
千尋はばつが悪そうな表情を浮かべて苦笑いする。
「とりあえず一度マンションまで送りますから着替えて来てください。僕、下で待ってますから」
そして車を走らせ千尋が一人暮らしをするマンションへと向かった。
「椎名さん。良かったら一緒に上がりませんか? もう私たち婚約しているんだからそろそろ部屋に上がるくらい……」
「それもそうですね」
嬉しそうに口角を上げた千尋が微笑んだ。
大阪に越して来てすぐの頃、千尋に出会った。
現在28歳の千尋は学生時代は東京で過ごし、その後は父親が経営する子会社で通訳と翻訳をしている。父親の名は東京にいる頃からもちろん知っていた。現在アメリカと日本を行き来し、メディアにも度々取り上げられるほどの実力者だ。
三代前から続く総合商社を営み、その他、資産運用、証券、不動産業など、多種多様な業界に精通している。
その娘である千尋との出会いはひょんな事からだった。