言い訳~blanc noir~
女が裸足のままクロという名前の猫を追いかけた。
和樹も女と一緒に走り出したが、猫の足にはかなわない。
真っ黒い毛並は夜の闇と同化してしまい、その姿がどこに消えたのかさえ見つける事が出来なかった。
「クロ……どうしよう……クロ? クロ?」
女は途方に暮れたように地べたに座り込んでしまった。
「僕、探しますから」
「もういいです。クロの事は諦めます。ありがとうございました」
「……幾らなんでも諦めるの早過ぎですよ。もう少し探しましょうよ」
あまりにもあっさりと諦めたような女の物言いに和樹は不謹慎だが笑いそうになってしまった。しかし女は口元だけ薄っすらと笑みを浮かべ悲しげに首を横に振った。
「クロはあんな場所にいたくなかったんだと思いますから」
あんな場所とは先ほどのアパートの事を言っているのだろうか。たった今遭遇したばかりの名前さえ知らない女の事情なんて勿論わかるはずがない。
「ありがとうございました」
女は立ち上がると和樹に頭を下げた。
「あ、あの。クロちゃんが見つかったらご連絡しますから、お名前とご連絡先を伺ってもいいですか?」
「広瀬です。広瀬 沙織」
和樹も女と一緒に走り出したが、猫の足にはかなわない。
真っ黒い毛並は夜の闇と同化してしまい、その姿がどこに消えたのかさえ見つける事が出来なかった。
「クロ……どうしよう……クロ? クロ?」
女は途方に暮れたように地べたに座り込んでしまった。
「僕、探しますから」
「もういいです。クロの事は諦めます。ありがとうございました」
「……幾らなんでも諦めるの早過ぎですよ。もう少し探しましょうよ」
あまりにもあっさりと諦めたような女の物言いに和樹は不謹慎だが笑いそうになってしまった。しかし女は口元だけ薄っすらと笑みを浮かべ悲しげに首を横に振った。
「クロはあんな場所にいたくなかったんだと思いますから」
あんな場所とは先ほどのアパートの事を言っているのだろうか。たった今遭遇したばかりの名前さえ知らない女の事情なんて勿論わかるはずがない。
「ありがとうございました」
女は立ち上がると和樹に頭を下げた。
「あ、あの。クロちゃんが見つかったらご連絡しますから、お名前とご連絡先を伺ってもいいですか?」
「広瀬です。広瀬 沙織」