言い訳~blanc noir~
 40まであと少し、極端に男慣れしていない一回り近く違う女に和樹はどのように接したらいいのか最近対応に困っている。

 先日久しぶりに美樹に会ったせいか千尋のように穢れのない女が不思議な生き物のように思えてならない。

 美樹が穢れている、という意味ではないのだが。


「あ、あの。よくネットとかで見るんですが……」

 千尋が突然口を開くと言い辛そうに手をもぞもぞと動かしながら俯く。

「何をご覧になったんですか?」

「その……この年まで処女って……その引きますか?」


 はい―――

 そう出掛かった言葉をまたしても飲み込んだ。

「そんなふうには思いませんよ。強い信念を持たれた方だなと思いますけど」

「まじで?」

「えっ?」

 千尋が言った「まじで」に面食らい言葉に詰まった。

「そう言ってもらえて嬉しいです」

 千尋がぱっと華やいだ笑顔を見せた。

 今「まじで?」と千尋が言ったのは聞き間違いだったのだろうか。

 和樹は小首を傾げながら紅茶を口にした。
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