言い訳~blanc noir~
和樹が差し出した手帳に、沙織という女は携帯電話の番号を記した。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
沙織が顔を上げ、にこりと微笑んだ。
街灯が沙織の顔を照らす。
目尻が跳ね上がった猫目に色素の薄い茶色い瞳としゅっと尖った細い顎。
猫顔とはこういう顔を言うのだろう。
「えっと、お名前は……?」
「僕は椎名です。椎名和樹です」
スーツの内ポケットから名刺入れを取り出した。名刺の裏に携帯番号を書き込み沙織に渡す。
「丸和銀行……? 銀行の方なんですか?」
「ああ、そうなんですよ」
「私、丸和銀行に口座持ってます! 3000円くらいしか入ってないけど」
沙織は屈託なく微笑んだが、和樹はこの状況下でどう答えていいかわからず「ありがとうございます」ととりあえず頭を下げた。
「椎名さん、ありがとうございました。じゃあ」
裸足のまま和樹の横を通り過ぎ、沙織は歩き出した。
「うわ」
声が聞こえ振り返る。足の裏を眺めながら笑っていた。
「大丈夫ですか?」
「ガム踏んじゃったみたいです」
沙織が足の裏を和樹に見せるとガムがべったりと足の裏に貼りついていた。
「広瀬さん、今夜は踏んだり蹴ったりですね」
和樹が困ったように笑うと、沙織も眉を下げくすくすと笑った。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
沙織が顔を上げ、にこりと微笑んだ。
街灯が沙織の顔を照らす。
目尻が跳ね上がった猫目に色素の薄い茶色い瞳としゅっと尖った細い顎。
猫顔とはこういう顔を言うのだろう。
「えっと、お名前は……?」
「僕は椎名です。椎名和樹です」
スーツの内ポケットから名刺入れを取り出した。名刺の裏に携帯番号を書き込み沙織に渡す。
「丸和銀行……? 銀行の方なんですか?」
「ああ、そうなんですよ」
「私、丸和銀行に口座持ってます! 3000円くらいしか入ってないけど」
沙織は屈託なく微笑んだが、和樹はこの状況下でどう答えていいかわからず「ありがとうございます」ととりあえず頭を下げた。
「椎名さん、ありがとうございました。じゃあ」
裸足のまま和樹の横を通り過ぎ、沙織は歩き出した。
「うわ」
声が聞こえ振り返る。足の裏を眺めながら笑っていた。
「大丈夫ですか?」
「ガム踏んじゃったみたいです」
沙織が足の裏を和樹に見せるとガムがべったりと足の裏に貼りついていた。
「広瀬さん、今夜は踏んだり蹴ったりですね」
和樹が困ったように笑うと、沙織も眉を下げくすくすと笑った。