言い訳～blanc noir～
　死を間近に感じた。

　だが不思議と恐怖心はなく驚くほどに冷静だった。

　元々生きる意味がわからない。人は生まれた瞬間から死に向かって歩き出すのにどうして愛だ、幸せだ、と大騒ぎするのかわからない。

　愛を残して死ねば、残された人間はどうなる？

　いつまでも消えない思いは心を砕き、苦しみながら、悔やみながら、四肢を切断されるかのような痛みを一生抱えなければならない。

　愛、幸せ、そんなもの必要なかった。

　もう二度とそんなものを信じるか。

　どうせいつかは死ぬんだ。


　ただ、時々思う。

　もしも死後の世界が本当にあるのであれば。


　クロは迎えに来てくれるだろうか。

　にゃあとあの甘えた鳴き声をもう一度聞けるなら死ぬのも悪くないか。

　そしてクロは、俺をあの人のところへ連れて行ってくれるだろうか。


　もう一度だけ会いたい。

　死ねばあなたに会えるだろうか。


　数秒の間に、巡った思い。

　これが走馬燈という現象なのだろうか。
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