言い訳~blanc noir~
身支度を済ませ、秋物のコートをシャツの上から羽織る。マンションの外に出ると秋晴れが広がる爽やかな朝だった。
するとあっさりとクロの姿を見つけ、和樹の顔が綻んだ。
マンションのエントランスを出てすぐの駐車場、しかも和樹の車のボンネットに大きな黒猫が体を丸め日向ぼっこをしていたのだ。
クロを驚かせないよう、足音を消し、ゆっくりと近づいた。
「クロ」
そう声を掛けるとクロは警戒する様子もなく、和樹の声に耳を動かし反応した。クロの頭をそっと撫でる。クロはされるがままに大人しく体を丸め目を細めている。
「お前、おりこうさんだな。昨日は怖かっただろ? もう大丈夫だからな」
和樹がクロを抱きかかえるとしなやかな身体つきの割にずっしりと肉付きが良く、両手にクロの重みを感じた。
そのままクロを部屋に連れ帰ると、クロは落ち着きなく和樹の部屋を徘徊して回ったが、しばらくすると気が済んだのかベッドの上で再び体を丸めていた。
「喉乾いただろ? 水飲むか?」
生まれてこのかた一度も動物と接した事がない和樹は、この黒い猫をどう扱っていいのかさっぱりわからない。
とりあえずスープボウルに浄水を注ぎ、クロの口元に近付ける。だがクロはちらっと目を向けただけでそっぽを向いてしまった。
「お腹空いてるのか?」
今度は冷蔵庫の中を開けてみたが猫が食べそうなものは何も見当たらない。
食パンを手でちぎりもう一度クロの口元に近付けた。しかしクロは迷惑そうだった。「ふん」と顔を背けられてしまう。
「犬じゃないもんな。パンなんか食べないか」
和樹はちぎったパンを口に放り込み苦笑いした。
そしてクロの隣に腰をおろし手帳を取り出した。決して綺麗とは言えない丸文字で書かれた広瀬沙織という名前と携帯電話の番号を眺めながらクロに話し掛けた。
「ご主人様に電話してあげるからな」
クロの頭を撫でながら沙織の番号をプッシュした。
するとあっさりとクロの姿を見つけ、和樹の顔が綻んだ。
マンションのエントランスを出てすぐの駐車場、しかも和樹の車のボンネットに大きな黒猫が体を丸め日向ぼっこをしていたのだ。
クロを驚かせないよう、足音を消し、ゆっくりと近づいた。
「クロ」
そう声を掛けるとクロは警戒する様子もなく、和樹の声に耳を動かし反応した。クロの頭をそっと撫でる。クロはされるがままに大人しく体を丸め目を細めている。
「お前、おりこうさんだな。昨日は怖かっただろ? もう大丈夫だからな」
和樹がクロを抱きかかえるとしなやかな身体つきの割にずっしりと肉付きが良く、両手にクロの重みを感じた。
そのままクロを部屋に連れ帰ると、クロは落ち着きなく和樹の部屋を徘徊して回ったが、しばらくすると気が済んだのかベッドの上で再び体を丸めていた。
「喉乾いただろ? 水飲むか?」
生まれてこのかた一度も動物と接した事がない和樹は、この黒い猫をどう扱っていいのかさっぱりわからない。
とりあえずスープボウルに浄水を注ぎ、クロの口元に近付ける。だがクロはちらっと目を向けただけでそっぽを向いてしまった。
「お腹空いてるのか?」
今度は冷蔵庫の中を開けてみたが猫が食べそうなものは何も見当たらない。
食パンを手でちぎりもう一度クロの口元に近付けた。しかしクロは迷惑そうだった。「ふん」と顔を背けられてしまう。
「犬じゃないもんな。パンなんか食べないか」
和樹はちぎったパンを口に放り込み苦笑いした。
そしてクロの隣に腰をおろし手帳を取り出した。決して綺麗とは言えない丸文字で書かれた広瀬沙織という名前と携帯電話の番号を眺めながらクロに話し掛けた。
「ご主人様に電話してあげるからな」
クロの頭を撫でながら沙織の番号をプッシュした。