言い訳~blanc noir~
「椎名さん、おいくつなんですか?」


 沙織から視線を向けたところで和樹がはっとした。


「あ、28です」


「そうなんですか。私の3つ下なんですね」


「え? そうなんですか?」


 とても31歳には見えなかった。


「え? もっと老けて見えますか?」


「いえ、逆です。僕より年下だとばかり」そう言うと沙織は猫のような瞳を緩ませ、柔らかく微笑んだ。


 その笑顔にまた目を奪われてしまった。


 その日からずっと沙織の事が頭にちらつくようになってしまった。

 また会えないだろうか。


 そんな馬鹿げた事を、和樹は願っていた。


 しかし沙織との再会はすぐに訪れた。


「椎名さん、お客様がお見えになってます。広瀬さんという女性の方、ご存じですか?」


 和樹は階段を駆け下り、銀行内のお客様窓口に向かった。

 すると沙織が立っていた。


「広瀬さん」


「椎名さん。こんにちは」


 沙織がぺこりと頭を下げた。
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