言い訳~blanc noir~
「いいよ。刺せよ」
そう絵里子に告げた。開き直りでも煽りでもなく、本当に刺殺されても構わなかった。
しかし絵理子は一向に刺さない。がたがたと震える手から出刃包丁が滑り落ち、そして、力が抜けたようにその場にへたり込むと声を上げて泣き出した。
目の前の光景をどこか遠くで眺めているかのように現実味がなかった。
「あんたなんか死ねばいいのに!!」
「だから殺せばいいだろ?」
地面に落ちた出刃包丁を和樹が拾い上げ、絵里子に手渡そうと近寄る。まるで酸欠の金魚のように口をぱくぱくと動かしながら這うように和樹から逃げようとする。
「殺していいよ」
もう一度絵里子に言うと「きゃあ」と悲鳴を上げ、血相を変え、その場から走り去って行った。どっちが被害者で加害者なのかわからない状態だった。
あれから1ヵ月、絵里子から何の音沙汰もないが再び襲撃に来るのだろうか。そう思っていた矢先、爆破予告を受けてしまった。
「爆破ですか。それは困りますね。失礼ですが、もう一度、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」
「笠井美樹と申します」
懐かしい名前に僅かに息が止まった。
そう絵里子に告げた。開き直りでも煽りでもなく、本当に刺殺されても構わなかった。
しかし絵理子は一向に刺さない。がたがたと震える手から出刃包丁が滑り落ち、そして、力が抜けたようにその場にへたり込むと声を上げて泣き出した。
目の前の光景をどこか遠くで眺めているかのように現実味がなかった。
「あんたなんか死ねばいいのに!!」
「だから殺せばいいだろ?」
地面に落ちた出刃包丁を和樹が拾い上げ、絵里子に手渡そうと近寄る。まるで酸欠の金魚のように口をぱくぱくと動かしながら這うように和樹から逃げようとする。
「殺していいよ」
もう一度絵里子に言うと「きゃあ」と悲鳴を上げ、血相を変え、その場から走り去って行った。どっちが被害者で加害者なのかわからない状態だった。
あれから1ヵ月、絵里子から何の音沙汰もないが再び襲撃に来るのだろうか。そう思っていた矢先、爆破予告を受けてしまった。
「爆破ですか。それは困りますね。失礼ですが、もう一度、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」
「笠井美樹と申します」
懐かしい名前に僅かに息が止まった。