言い訳~blanc noir~
「次、生まれ変わったらご主人様の奥さんにしてくれますか?」


 多分沙織にとって深い意味なんかないのだろう。

 だけどその言葉が強く和樹の胸に響いた。


「沙織を僕の妻にさせてください」


 本気でそう伝えた。

 だが沙織は無邪気に笑っていた。「来世の結婚相手が見つかりました」と言って。


 思わず沙織をこの手で抱きしめたくなった。

 しかし和樹には恋人が、沙織には夫が。


 ぎりぎりのところで理性が働き、その衝動を腹の底に押しこんだ。


 だけどそろそろ無理かもしれない。


 そう感じることが多くなっていた。
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