言い訳~blanc noir~
 テーブルに並べられた大根の味噌汁とハムエッグ、そして、わかめご飯に野菜サラダ。

 和樹が眠っている間に沙織は一度帰宅し、スーパーで買い物を済ませ戻って来たらしい。

 その際、クロも一緒に連れてきていた。


「全く気付きませんでした」


 和樹が味噌汁を口にしながら言う。


「ご主人様、私が出て行く前も戻って来たときも同じ体勢で眠ってましたよ。寝相いいんですね」


「寝相がいいか悪いかは眠ってるからわからないけど。でも沙織もずっと腕枕されて寝てたんでしょ?」


 そう言うと沙織が目を瞬かせ、恥ずかしそうに漬物を口にした。



 こんなにも幸せな朝を迎えたのは初めてだった。


 これまでも関係があった女と朝を迎える事は何度もあったが、前日の夜、セックスした事以外は何も変わらない朝だった。

 沙織と向かえる朝はなぜか特別なものに思える。

 ずっと沙織とこうやって朝を迎えたい。女に対してこんな気持ちを抱いたのも初めてだった。


「今日お天気いいですよ」


 沙織が窓の向こうを眺めながら目を細めた。


「休みだしドライブでも行きましょうか」


 沙織は「はい!」と子供のように大きく頷いた。
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