言い訳~blanc noir~
そしてぎこちなくパソコンに触れる沙織の背後からまるで家庭教師のように使い方を教えていると、沙織は何となく電源を入れ、自分でメモ帳を取り出し、そこに文章を打てるようになった。
作成した文章をプリンターに接続し、プリントアウトさせるところまで教えたが、どっと疲れてしまいその晩は沙織も和樹もあっという間に眠ってしまった。
きっと仕事に行っている間も沙織は家事の合間にパソコンに触れていたのだろう。プリンターと接続しミステリアスな手紙をプリントアウトしていたのだ。
「“ごしゆじんさま”の小さい“ゆ”が出せないんです」
「えっと。SHUで“しゅ”になるよ」
沙織が人差し指でSYUと押すとメモ帳に“しゅ”と表示され「おお!!」と驚きの声をあげた。
ついでに漢字への変換や句読点の打ち方を教えると「凄い凄い!」と和樹に抱きつき「ご主人様って天才ですね!」と褒められてしまった。
―――この程度で天才なら俺はきっと明日にでも頭取になれるな。
「でもどうしてパソコン覚えたくなったの?」
沙織に訊ねた。
「テレビで観たんです。最近ブログっていうのが流行ってるんでしょう? パソコンで日記が書けるって凄いなーって。写真も載せられるんですよね?」
「ああ。みんなやってるね。俺、そういうの面倒だからやってないけど」
「私、手帳に毎日日記書いてるんですよ。知らなかったでしょ?」
沙織がバッグから手帳を取り出し和樹に差し出した。
「見ていいの?」
沙織が頷き、和樹はぱらぱらとページをめくる。すると丸い小さな文字で日付けのところにぎっしりと文字が書き込まれていた。
しかし、その全ては、“ご主人様と何をした”とか“クロとご主人様がどうだった”とか、和樹とクロの事しか書かれていない。
和樹が笑いながら手帳を返すと沙織が「うふふ」と微笑み大切そうに胸に抱えた。
「私、今まで自分の人生が早く終わればいいのにってずっと思ってたんです。過去を振り返る事も嫌だったから日記なんて馬鹿みたいって思ってました。でも、ご主人様に出会ってから毎日楽しくて幸せで。ぜーんぶ記録に残しておきたいんです」
「じゃあ、沙織が毎日楽しい事ばかり書けるようにいっぱい思い出作らないとだね」
「はい!」
作成した文章をプリンターに接続し、プリントアウトさせるところまで教えたが、どっと疲れてしまいその晩は沙織も和樹もあっという間に眠ってしまった。
きっと仕事に行っている間も沙織は家事の合間にパソコンに触れていたのだろう。プリンターと接続しミステリアスな手紙をプリントアウトしていたのだ。
「“ごしゆじんさま”の小さい“ゆ”が出せないんです」
「えっと。SHUで“しゅ”になるよ」
沙織が人差し指でSYUと押すとメモ帳に“しゅ”と表示され「おお!!」と驚きの声をあげた。
ついでに漢字への変換や句読点の打ち方を教えると「凄い凄い!」と和樹に抱きつき「ご主人様って天才ですね!」と褒められてしまった。
―――この程度で天才なら俺はきっと明日にでも頭取になれるな。
「でもどうしてパソコン覚えたくなったの?」
沙織に訊ねた。
「テレビで観たんです。最近ブログっていうのが流行ってるんでしょう? パソコンで日記が書けるって凄いなーって。写真も載せられるんですよね?」
「ああ。みんなやってるね。俺、そういうの面倒だからやってないけど」
「私、手帳に毎日日記書いてるんですよ。知らなかったでしょ?」
沙織がバッグから手帳を取り出し和樹に差し出した。
「見ていいの?」
沙織が頷き、和樹はぱらぱらとページをめくる。すると丸い小さな文字で日付けのところにぎっしりと文字が書き込まれていた。
しかし、その全ては、“ご主人様と何をした”とか“クロとご主人様がどうだった”とか、和樹とクロの事しか書かれていない。
和樹が笑いながら手帳を返すと沙織が「うふふ」と微笑み大切そうに胸に抱えた。
「私、今まで自分の人生が早く終わればいいのにってずっと思ってたんです。過去を振り返る事も嫌だったから日記なんて馬鹿みたいって思ってました。でも、ご主人様に出会ってから毎日楽しくて幸せで。ぜーんぶ記録に残しておきたいんです」
「じゃあ、沙織が毎日楽しい事ばかり書けるようにいっぱい思い出作らないとだね」
「はい!」