言い訳~blanc noir~
「あと2ヵ月か。4月に入籍できますね。ご主人様いつがいいですか?」


「引っ越しが4月だろ? どうしようか、6月の沙織の誕生日は? ジューンブライドだし」


 そう提案すると「ジューンブライドかぁ」と目を細めた。


「結婚式は海外で挙げよう。入籍を先にして、式はちょっと後でもいい? 仕事のスケジュール調整しないといけないし」


「はい!」


 沙織とあと4ヶ月で入籍か。

 沙織の肩を抱き寄せ、もう一度先ほどもらった手紙を二人で眺めた。


「ご主人様、私より長生きしてくださいね」


「わかってるよ」


 唇にそっとキスをすると沙織が目元を緩ませた。






「椎名さん、毎日幸せそうですね」


 喫煙室で煙草を吸っていると古賀からそんな言葉を掛けられ、和樹は照れたように笑った。


「私も誰かいい人いないかなぁ」


「古賀さん、彼氏いなかったっけ?」


「もう2年はいませんよ。こんなにいい女が独身、彼氏もいないって世の中の男見る目ないですよね」


「古賀さんってまだ27だろ?」


「もう27ですよ。最近結婚ラッシュだからちょっと焦るな。みんな20代で結婚してるし。椎名さんも20代で結婚でしょ。私、30までに結婚出来るかなぁ」


 古賀は溜息と一緒に煙を細く吐きだした。


「古賀さん綺麗だからいい人見つかるよ」


「はいはい。そういう気休めみたいな言葉って余計に傷つくんですよ? あーあ。沙織さんが羨ましいなぁ」


「沙織が?」


 煙を吐きだした和樹が古賀に目を向ける。と、古賀が口を尖らせていた。
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