言い訳~blanc noir~
沙織がパソコンに触れるようになってから1ヶ月が過ぎた。
まだまだ寒い日が続いているが梅の花が蕾をつけ始める3月を迎えていた。
来月の中旬に引っ越しを控えそろそろ本格的に荷造りを開始しなくては、と考えていたが、仕事が慌ただしくそれどころではなかった。
それでも沙織は愚痴を零す事なく、和樹の帰宅が何時であろうと、いつものように朗らかな笑みを浮かべ玄関に出迎えてくれた。
「クロ、お前最近抜け毛凄いなー」
「はい」
沙織が和樹にブラシを手渡す。いつの頃からクロのブラッシングは和樹の仕事になっていた。
「すぐご飯にしますね」
沙織が猫柄のエプロンを纏うとキッチンに立ち鍋を温める。すると香辛料の匂いが香ってきた。
「今日カレー?」
「ゲーンキャオワーン」
沙織が意味不明な言語を笑いながら言った。和樹はクロのブラッシングの手を止め「え?」と聞き直す。
「ゲーンキャオワーンですよ!ゲーンキャオワーン!知りませんか?」
「ゲーンキャオワーン? 知らない。なにそれ?」
「タイカレーです」
和樹が吹き出した。
「タイカレーって言えよ。何かと思ったじゃん」
「今日インターネットで作り方調べたんです!! 私ハイテクでしょう?」
沙織が部屋に顔を向け自慢げに「ふふん」と鼻で笑った。
「凄いね。沙織もとうとうネットデビューしたんだ」
仰向けにひっくり返りごろごろと喉を鳴らすクロをブラッシングしながら沙織に声を掛けた。すると沙織が皿にタイカレーをのせ笑顔で駆け寄ってきた。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
和樹がカレーを口にするとスパイスの辛さが口の中に焼けつくように広がり思わず咽かえってしまった。沙織がその姿を眺めながら大笑いする。
「辛い?」
「辛いけど……美味しいよ」
咽ながら水を口にすると沙織が再び笑った。
「あ、“今日の手紙”読むの忘れてた」
まだまだ寒い日が続いているが梅の花が蕾をつけ始める3月を迎えていた。
来月の中旬に引っ越しを控えそろそろ本格的に荷造りを開始しなくては、と考えていたが、仕事が慌ただしくそれどころではなかった。
それでも沙織は愚痴を零す事なく、和樹の帰宅が何時であろうと、いつものように朗らかな笑みを浮かべ玄関に出迎えてくれた。
「クロ、お前最近抜け毛凄いなー」
「はい」
沙織が和樹にブラシを手渡す。いつの頃からクロのブラッシングは和樹の仕事になっていた。
「すぐご飯にしますね」
沙織が猫柄のエプロンを纏うとキッチンに立ち鍋を温める。すると香辛料の匂いが香ってきた。
「今日カレー?」
「ゲーンキャオワーン」
沙織が意味不明な言語を笑いながら言った。和樹はクロのブラッシングの手を止め「え?」と聞き直す。
「ゲーンキャオワーンですよ!ゲーンキャオワーン!知りませんか?」
「ゲーンキャオワーン? 知らない。なにそれ?」
「タイカレーです」
和樹が吹き出した。
「タイカレーって言えよ。何かと思ったじゃん」
「今日インターネットで作り方調べたんです!! 私ハイテクでしょう?」
沙織が部屋に顔を向け自慢げに「ふふん」と鼻で笑った。
「凄いね。沙織もとうとうネットデビューしたんだ」
仰向けにひっくり返りごろごろと喉を鳴らすクロをブラッシングしながら沙織に声を掛けた。すると沙織が皿にタイカレーをのせ笑顔で駆け寄ってきた。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
和樹がカレーを口にするとスパイスの辛さが口の中に焼けつくように広がり思わず咽かえってしまった。沙織がその姿を眺めながら大笑いする。
「辛い?」
「辛いけど……美味しいよ」
咽ながら水を口にすると沙織が再び笑った。
「あ、“今日の手紙”読むの忘れてた」