言い訳~blanc noir~
 テーブルの上に四つ折りにされた白い用紙が置かれている。

 パソコンを扱うようになってから1ヶ月、沙織から毎日欠かさず手紙をもらっている。


 最初はミステリアスな文章だったがここ最近はめっきり上達しごく一般的なラブレターになっている。

 それはそれでちょっと寂しい気もしたが、沙織は意外と物覚えが速い。

 先日ネットのタイピングゲームを対戦したところ、一度だけ沙織に負けてしまった。

 いつの間にかタイピングも特に問題なく出来るようになった事が悔しかった。


 カレーを口にしながら用紙を開く。



『ご主人様へ

毎日お仕事ご苦労様です^^

クロの抜け毛のシーズンがやってきました。

ご主人様がお仕事に行っている間もブラッシングをしているのですが次から次に毛玉がいっぱい出来てしまいます。

毛玉の有効利用がないか考えているのですがなかなか見つかりません(泣)

ご主人様も考えておいてくださいね!

健康に気を付けて私より長生きしてください!

私は毎日ご主人様の傍にいられる事がとっても幸せです。

ご主人様大好きです。


沙織より』




「沙織凄いね。これだけ立派なラブレター書けるならそろそろブログデビューも出来るんじゃない?」


「本当ですか?」


「うん。ブログサイトに登録してみたら? 俺を一番最初の読者にしてよ」


「登録って簡単ですか? 私でもできますか?」


「簡単だよ。食べ終わったら登録してあげるよ」


 そう言うと沙織は「やったー」とはしゃいでいた。

 沙織はブログデビューするときのために携帯電話のカメラでクロの写真を大量に撮り続けていたらしい。


 和樹にトップ画像をこれにしてくれと、見せられた写真のクロがとんでもなく不細工だった。あくびをする寸前なのかお世辞にも可愛いとは言い難いものだった。
< 97 / 200 >

この作品をシェア

pagetop