恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「でも、私も乗ってたし、今日だってこうして遠慮なく御馳走になってしまいました。頂いたとしても、お釣りの分までは頂けません」
「いいから。今日だって、この前だって、全部私の事なんだから。こんな時、無粋な気は利かさなくていいんだよ?いいね?お釣りだろうと何だろうと返しては駄目だ、これはしまいなさい、いいから」
あ、バッグに入れられてしまった。
「お金も盗られて、殴られた身体は痛かったけど…、君のような人に偶然出会えて…」
「え?」
顔を擦っていた。
「…いや、…何でもない。いや、何でもなくは無いんだが…。はぁ、お礼ができて良かった。本当はもっとディナーのコースメニューとかにしたかったんだが。よく知らないオジサンとなんて逆に警戒されて断られてもと、悩んだ挙句だったんだ。…携帯の番号は、もう、消しておいてくれるかな。知らないオジサンのは要らないと思うから」
あ、これでおしまい、お礼は済んだ、もう関わらないって意味だ。残されていては迷惑だって事なんだ。
「は、い。解りました。消しておきます。…あの、もし、どこかでお見掛けしても、声を掛けては駄目なんですよね?」
「ん?いや…そんな事はないけど」
え?…迷惑ではないの?じゃあ消しておいてくれって、どういう意味で?…。それとこれは違うのか…そうよね。
「あー、誤解を生むといけないと思ってね。今日だって、こうして来て貰ったけど、都合をつけて来てくれたのだろ?私が連絡をして欲しいと伝えたばっかりに」
え、え?…あ。そんなのは違う。
「登録されているかどうかは知らないが、もしそうしてくれているのなら、男名前の番号は彼に誤解をさせてしまうからね」
「あの、誤解なんてありませんよ?…私に、誤解させるような人は…居ません。私がすんなり消す事を受け入れたのは、高守さんの方が、もう、これで終わり…関わりたくないのだと思ったからですよ?」
息子さんが居る。そうなると奥さんだって…だから。揉め事の元になりそうなモノは残したくないんだって…。
「高守さんの方こそ、何でもなくても、私の番号なんて入れていたら困るでしょ?」
入れてないかも知れないけど。
「いいや、私は別に問題ないよ?」
…そうなんだ。そういう夫婦関係…。携帯とか、チェックするような奥さんじゃないのかな。
「…お怪我の事、ご家族の方、心配されたでしょ…」
「んー、心配って言っても、入院するとか、そこまで酷いモノでもなかったから、あっさりしたもんだった。びっくりはしてたし大丈夫かって心配はしてたけど。一応、あの時、連絡しても忙しくて直ぐには返事も無かった。まだ取り込んでいたようだし。そっちが優先だ。それでいい。まあ、そんなものだよ?
…逢坂さん。また、会えないかな…どうだろう」
…仕事、か…。長くなった夫婦関係って、そんなモノなのかな…。重体じゃ無かったから…。よそ様の夫婦の事は解らない。
「…え?」
今、何て…。