恋?…私次第。~好きなのは私なんです~

「でも、私も乗ってたし、今日だってこうして遠慮なく御馳走になってしまいました。頂いたとしても、お釣りの分までは頂けません」

「いいから。今日だって、この前だって、全部私の事なんだから。こんな時、無粋な気は利かさなくていいんだよ?いいね?お釣りだろうと何だろうと返しては駄目だ、これはしまいなさい、いいから」

あ、バッグに入れられてしまった。

「お金も盗られて、殴られた身体は痛かったけど…、君のような人に偶然出会えて…」

「え?」

顔を擦っていた。

「…いや、…何でもない。いや、何でもなくは無いんだが…。はぁ、お礼ができて良かった。本当はもっとディナーのコースメニューとかにしたかったんだが。よく知らないオジサンとなんて逆に警戒されて断られてもと、悩んだ挙句だったんだ。…携帯の番号は、もう、消しておいてくれるかな。知らないオジサンのは要らないと思うから」

あ、これでおしまい、お礼は済んだ、もう関わらないって意味だ。残されていては迷惑だって事なんだ。

「は、い。解りました。消しておきます。…あの、もし、どこかでお見掛けしても、声を掛けては駄目なんですよね?」

「ん?いや…そんな事はないけど」

え?…迷惑ではないの?じゃあ消しておいてくれって、どういう意味で?…。それとこれは違うのか…そうよね。

「あー、誤解を生むといけないと思ってね。今日だって、こうして来て貰ったけど、都合をつけて来てくれたのだろ?私が連絡をして欲しいと伝えたばっかりに」

え、え?…あ。そんなのは違う。

「登録されているかどうかは知らないが、もしそうしてくれているのなら、男名前の番号は彼に誤解をさせてしまうからね」

「あの、誤解なんてありませんよ?…私に、誤解させるような人は…居ません。私がすんなり消す事を受け入れたのは、高守さんの方が、もう、これで終わり…関わりたくないのだと思ったからですよ?」

息子さんが居る。そうなると奥さんだって…だから。揉め事の元になりそうなモノは残したくないんだって…。

「高守さんの方こそ、何でもなくても、私の番号なんて入れていたら困るでしょ?」

入れてないかも知れないけど。

「いいや、私は別に問題ないよ?」

…そうなんだ。そういう夫婦関係…。携帯とか、チェックするような奥さんじゃないのかな。

「…お怪我の事、ご家族の方、心配されたでしょ…」

「んー、心配って言っても、入院するとか、そこまで酷いモノでもなかったから、あっさりしたもんだった。びっくりはしてたし大丈夫かって心配はしてたけど。一応、あの時、連絡しても忙しくて直ぐには返事も無かった。まだ取り込んでいたようだし。そっちが優先だ。それでいい。まあ、そんなものだよ?
…逢坂さん。また、会えないかな…どうだろう」

…仕事、か…。長くなった夫婦関係って、そんなモノなのかな…。重体じゃ無かったから…。よそ様の夫婦の事は解らない。

「…え?」

今、何て…。
< 12 / 92 >

この作品をシェア

pagetop