恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
向かい合って座った。
「貴方もどこか出掛けてたの?」
と、言うよりも仕事だったのかな。土曜が仕事の人だっているだろうし。そんな感じの服装だ。
「はぁー、疲れましたよ」
「え?」
「仕事です。まだまだ…、色々あるんですよね…。はぁ、本当、まだまだ気が抜けない」
「何かトラブル?」
「…システムエラーです」
「わ、可哀想…。業務が止まっちゃった?エンジニアとか、なの?だから、呼び出し?」
「いや、そういうのではないけど。ふぅ。通常なら今日は久し振りに休める日だったんですよ。それが、上手くソフトが作動しなくなったって、泣きそうな連絡が来て。このままだと配送の連絡に時間がかかりますって。慌てましたよ。だから、人海戦術で今回は何とかって…」
「それで急遽出勤?」
「はい。まあ、俺の会社なんで。あ、会社っていっても、小さい部屋を借りてるくらいのもんなんですけど」
「へぇ、雇われ人とは違うから、責任重大ね。その分、自分の会社だから気は楽な部分はあるのかな」
頷いているような、否定しているような…曖昧に首を動かしながら返事が返ってきた。
「軌道に乗ってくればいいですけどね。まだ、色んなモノのバランスも…従業員も慣れてないし」
「まだ始めたばっかりなの?」
「はい、ばっかりって程でもないけど。まだ落ち着きませんね。まだまだこれからです。だからシステムに限らず、全てにおいて様々なトラブルがあります」
「そうなんだ。でも若いのに凄いのね。あ、単純な言い方をしてごめんね」
「いえ。俺、変わり者だって自分で解ってるから。だから、どうせ就職してよそ様の企業で働いたとしても、結局人間関係で、なんでなんだ、とか、ぶち当たると思ったんですよ。そう思いながら勤め続けたら、きっと病んでしまうと思ったんです。だったら自分で作ってしまおうって。単純に言えば、気が弱いんです。打たれ強く無いんだと思います」
「自分の会社のプレッシャーは、別物って感覚って事よね」
「はい。人を雇う責任はありますが」
「んー、でも、納得しながら仕事はできるわね」
「はい、それですね。あー、俺の事ばっかり。そっちの苛々の原因は?なんなんです?それを聞かなくちゃ」
これ、お茶請けにどうぞ、と、クッキーを勧められた。ケーキじゃないから遠慮もせず手を伸ばした。
「頂きます。知り合いの話なんだけどって、つもりで聞いて?」
「あ、はい。いいですけど、つもりでって、言ってるし。まあいいです、他人の話として聞けばいいんですね?」
「うん。…今更だけど。…つもりでって、言わなきゃ良かった…」
「ぇえ?はい?」
「はぁ。もう、話す方が気が重くなっちゃった。…どうでもいいかな」
「え?では、止めておいたらどうです?言わなくて良くなったのなら別に…それこそ無理に話さなくても」
「んー、でも、部屋に帰ったら…甦る…沸々する」
「あ、じゃあ、どっちでも、気の済むように、好きにしてください」