恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
…何だか口先で振り回してるみたいになっちゃった。気を利かせて…合わせてくれて…いい子ね。
「んー、最近、知り合いになったばっかりの人の事なんだけど…」
さっきまで会ってたのよ。
「え、それ、俺ですか?」
「え…ち、違う。この場合は今から改めて話すんだから、別の人の事でしょ。もう…」
「ハハ、解ってます。どうぞ?」
例え話かと思って、続けて続けて、と笑って言う。もう…。あ、でも、お陰で話し易くなったかも。
「んん…その人、ちょっと事件に遭ってしまって…。私が偶々通り掛かって。助けたって程ではないけど、交番に行ったり、病院に行くのに付き添ったりしたの」
「…へえー。事件ていうのは本当ですか?」
「うん、本当の事。それで、その人と、今日、お礼だって誘ってもらって、ご飯に行ってきたのね」
「まあよくある話じゃないですか、お礼に食事ってのは。それで何故機嫌が悪くなったんでしょうね…」
あ、他人の話のふりね。してくれてるんだ。
「食事の後で、事件があった公園に行ったのよね」
「えー、わざわざ現場に?」
「そう。私も、…って言っちゃってる。あ、ま、いいか。私も、何故わざわざ怖い目に遭ったところにって思ったんだけど。桜が見たかったのかもと思って…。ちょっと、あの夜は幻想的に綺麗だったし、雰囲気が抜群に良かったの、月も満月で、花弁がね、舞うように…」
「それで?」
ん?急かされてるのかな?
「あ、うん。…そこで、また会いたいって言われた」
「それで?」
「それでって…。可笑しくない?」
「どうして?」
「どうしてって。お礼も済んだんだよ?…どう考えても…可笑しいでしょ」
「だから、何がです?」
「だって…、会うって可笑しい。なぜ会うの?」
「それ、モテる人だって自慢?…決まってる、向こうが会いたいからでしょ」
自慢?…そんなんじゃ無い、私……モテないから。
「会いたいって何?」
「はぁ、俺に聞かれても…。普通、また会いたいって言ったら、これっきりにしたくないって事でしょ?」
「そうでしょ?」
「あ…解かってるんじゃないですか…」
「そうだとしたら、可笑しいの」
「だから、…何が…普通によくあることでしょ。こっちも会いたきゃ会えばいい、それだけの事でしょ?」
「それはしては駄目なのよ」
「また…。またそこに戻るんですか?なんで駄目なんです」
「それは…、家庭のある人だから…多分…」
「あ、…はぁ。物凄く、一気に先へ…飛躍して考えたんですね」
「え?」
「…その人は、愛人になってくれとでも言ったのですか?身体の関係を持ちたいって、持ち掛けてきたのですか?」
「ちょ、そ、そんな事…。言わないわよ…」
周りが気になってちょっとキョロキョロした。お互いの席はとても近いから。
「だったら、家庭があっても、会ってまたご飯を食べるくらいの事、罪になりますかね…」
「私が奥さんだったら嫌だと思う。何だか、嫌でしょ?」
「それで?」
「…それで?」