恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「中々上手だね。上手くかわされ続けた」

それ程のつもりもなかった。…返事に困る事、言わないで欲しい。偶々だ。同じ事を言われたら、次は違った返しが必要かな…。

「困らなくていいよ?大丈夫。ちゃんと送るし、遠回りもしない。部屋までは行かないし、安心して?」

困った顔を見せてしまってるんだ。眼科の前で降ろされるのかな。

「あの」

「ん?」

「いいえ、何でもないです。あ、えっと、今日も…色々あったなって、思って」

そうだ…、明確に場所を教えない限り部屋までは行こうにも行けないんだった。

「そう?」

そうか…。私が色々としちゃっただけなんだ。高守さんは私との事だけだけど、私はあの彼とも会ってたんだ。


「あ、傘…渡せて良かった。あれっきりだったら渡せなかったよね」

眼科の前に着いた。

「ここから遠くない?夜でも歩く道は危なくない?大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

ドアを開けてもらい、また手を取られ、降りた。高守さんはドアを閉め反対側に行くと、後ろのドアを開け傘を取り出した。

「歩いて帰るなら送ろうか?…はい」

遅れて側に行った私に傘は渡された。それではここで降りた意味が無いのでは?

「有り難うございます。歩いてですか?」

「ん?」

「あ、だってですね、もう見えてるので、大丈夫。…あ」

指まで差してしまった。ここら辺でアパートといったらそこしかない。私の部屋はそこですって、教えてしまったようなものだ。
少し離れた高い建物は顔を向けたら見えていた。

「フ…駄目だよ…。あそこなんだね、部屋は。次からは前まで送るよ。構わないね?」

何、自分から教えてるのって思って…少し笑ったんだ。これでは聞かなかった意味が無いって。

「…はい、いえ、あ、送って頂き有り難うございました」

「フ…、どう致しまして。また、連絡してもいいかな…」

「あ、は、い」

何とも歯切れが悪いのだけど。いいも悪いも…。連絡くらいならって、思ってしまうのは駄目な事かな…。

「構わないよ?断ってもらって。まず君と連絡を取りたい、それは私が勝手にしたいだけの事だからね。その先が面倒な時は断ってくれていいから」

「はい、その都度考えます」

即答で冷たい事務的な返事かな…。まるで、そうしますって、断りますって言ってるみたい。そこまでは思わないかな、これは私の内面だから解らないか…。

「ん。それで構わないから。では、おやすみ。近くても気をつけてね」

ちょっと指を差された。

「あ、ハハ、はい、おやすみなさい。有り難うございました」

車に乗って手を上げ、離れて行くのを見送った。
は、ぁ…。気紛れでいいって事?何も定まってない気持ちが行ったり来たりしても構わないって事?
ふぅ。何だか…、長い一日だったな…。
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