恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「鍵も掛かって無かったくらいだ。まだ、さっきのままなんだろ?」
格好が、ってことだ。
「あ、はい」
やっと声が出た。どうしよう。待ってもらおうかな。それとも…。
「あの…構いませんので入ってください」
状況はさっきまでと同じなんだ。そう思えば特に…大丈夫だと思う。
「いや…、しかし」
そうか。それが出来ないって言うのが普通の事よね。私が麻痺していたんだ。
「では、ちょっと待ってもらえますか?」
ベッドから降りて脱ぎ散らかしていた服を拾い、急いで着た。
「ごめん。慌てなくていいから。…手だけ出してもらって渡してくれてもいいんだけど…」
ドア越しの声だ。あ。もうそれは。
身なりを整えてネクタイを手にした。
「お待たせしてすみません。何だか服がクシャクシャで恥ずかしいです。帰る時点で直ぐ気がつけば良かったのに…ごめんなさい」
顔を伏せ気味に、ドアを開けると同時に持っていた手を差し出した。
手の上にあったネクタイはスルリと滑り落ちた。あ、いけない…。
「いいんだよ、謝らなくて。どうせするなら…記憶に残るセクハラがいい。
…顔を見せて…これって…駄目だろうか」
またセクハラ?肯定も否定も、考えて答える、そんな余裕は持たせてくれなかった。もう抱しめられていた。
「はぁ…駄目だよね、これは罰せられる行為だ。
日の昇った道を歩いていた。朝帰り…こんな事…久し振りだなって思った…ふとネクタイが無い事に気がついた。そしたら忘れていますというメールが来た。
私は…理性を利かせて帰ったつもりだったんだ。君が私のシャツのボタンを一つ、二つと外した事も。何でも無いと、考えないでいようと、思っていたんだ。…はぁ…無理だった。あんなメールは、今、取りに来いって言われているような気がして…戻って来てしまった。…勿論、君の意図していた事は違うと思うが。…はぁ…喋り過ぎかな…」
…えー、あ、の。