恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
・アナタの気持ち次第
「真っ昼間だから送らなくても大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ」
「じゃあ」
「じゃあ」
背を向けてお互いに歩き出していた。あ、…やっぱり。
「ねえ?送って?」
「え?」
足を止め、振り向き、声を掛けた。
「昼間だけど。もう少し…、一緒に居たいかな」
「…え?」
「部屋まで送って?」
「え…それって…」
「…なんてね」
「はい?」
「フフ。ごめん。ちょっと練習してみた」
「は。え?」
「だから、ごめんなさい。こんな言葉、言ってみた事がないの。だから言ってみたの、練習よ、練習」
「…はあぁ、練習台ね……直ぐ、使う予定なんですか?だから、練習?」
「え?まさか。言ってみた事がなかったから。私って可愛らしい言葉の一つも言えずにきたから」
「はぁ…もう…やめてくださいよ。使う予定も無いのに迂闊に言う事ではないです…」
「どうしたの?ねえ?」
何か、変じゃない?
「何でもありませんよ。人騒がせな人だ…」
「え?」
「何でもないですって言ってるでしょ。あー、さっきの言い方、使う事があったら言ってみてください。…ドキドキさせる事ができますから。いいと思いますよ、凄く」
「そう?本当?でも、ないない。使う事は無いわね…あ」
「え?」
「…何でもない」
昨夜…。寂しいから一緒に居て、って言ったとか…。そんな言葉、高守さんに言っちゃってたんだ私…。
「どうかしました?」
「そうよ…どうかしてたのよ…」
だから改めて抱きしめられるような事に…。
「え?」
ブンブン首を振って大きくふらついた。
「あ、何してるんです!…フゥ、危ないでしょ。車道に倒れたら一瞬で跳ねられてしまいますよ?」
パパーッと、激しいクラクションを鳴らされた。声をあげる間もなかった。危なかった。頭から血が一気に下がったんだ。つまり貧血のような状態を自分で作ってしまった。
「はぁ、ごめん、有り難う…迂闊でした。はぁびっくりした、もう大丈夫だから」
「はぁ…、俺の前では気絶して倒れたり、ぶつかったり。今はふらついて…忙しい人だ。健康管理できてます?本当に大丈夫?」
言われてみたら本当だ。災難ばっかり、遭わせてしまってる。