恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「大丈夫、体は健康だから。はぁ、でもごめん…。思い出した事があって…。頭の中から払おうとしたの。もう大丈夫だから」
支えてもらっていた腕を掴んで、やんわりと元に戻すように下ろした。
「送りますよ」
「え?」
「こうなったら送ります。一人では帰せませんよ。夜じゃないけど、違った意味で危ないから。こんなのあった後では、無事帰りつくのか心配でしょ」
「あ、これは大丈夫よ。原因は首を強く振り過ぎただけって解ってるから。しなきゃいい訳だし」
「…でも。貴女のことだから、また何か思い出して、またうっかり振るかも知れないじゃないですか」
「そ、れは」
あ、…は。どんだけ迂闊なの…。
「馬鹿にしている訳ではないです。用心の為です。今みたいにフラッと倒れ込みそうになるかも知れない、あっ、と思っても間に合わないんですよ?」
「そんな…もうしないから」
「解らないでしょ?一人で歩いてると、考え事、するでしょ?心配で…帰せませんよ」
「有り難いけど、そこまでは…大丈夫よ」
あ…何度も断って、これだと善意を無下にしてしまうのか。んー…。ここは素直に言葉に甘えた方がいいの?
「解った。じゃあ、送って?」
「もう少し、一緒に居たいから…」
…トクン。…え?
「今ですよ、今。こんな風に、自然に使うチャンスだったじゃないですか」
え?でも。それは…。今の、え?
「自然に言葉を出す、練習のチャンスだったでしょ?」
あぁ、そういう意味よね。…練習ね。無駄にときめいてしまったじゃないの…?
「本当ね。機転が利かなかった。こういう場面で可愛く甘えるチャンスだったのに。言われるとドキドキするものなのね」
「…え?そうでしょ?…そうですよ。凄くいいじゃないですか」
「そうよね」
…あ、え?
「手、貸してください」
「え、でも」
だって、これは…。
「手、です。繋いでいたら直ぐ間に合うでしょ?ふらついた時」
「あ、はいはい。そういう事でなのね」
貸してくださいと言う言葉より先に繋がれていた。これって事後承認じゃない。まあいいけど。
「では、お世話になります。フフ」
「フ。なんです、それ。大丈夫なんでしょ?」
「だから、まさかの時はよ」
本当。何なんだろうこれって。少しだけ前を歩く手に引かれて…。ちょっとドキドキするじゃない?