恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「ガンガン来られたらどうする?押しかけたら迷惑だろ?」
「高守さんはしないと思います。許可を取ってからでないと来ません」
「君は狡いな。そう言っておけば私は無理に押し掛けたりしないと思っている」
「はい」
恋は盲目といえども…高守さんは大人ですから。凄く大人な人ですから。
「ま、あ、そこは状況によりけりだから。人としてはいい人で居られても、男としたら、解らないよ?」
制御は効かないって事?は、あ、これ以上は無理。それこそ押され負けしてしまいそう。もう充分攻めが始まってる気がする。
「連絡は頂いたら返します」
ちょっと強気に言って終わらせておかないと。…ちょっと?…私って…何故、ここまで好きにならないようにするような事してるんだろ?…。困ってるの?迷惑だと思ってる?人を好きになるって、そんなに敬遠したい事…?
「有り難う。忘れられないように連絡はするつもりだから。衝動で抱きしめたりするものではないね、抱きしめた君の感触…、香りも忘れられないよ…じゃあ」
あ。…あ、何。何、今の。はぁ。私がかけたんだから、言い捨てて勝手に切ったりしないで。これが狡くなくて何が狡いのよ。もう、ちょっとー、攻めてきてる。最後に印象付けるような事言わないでよね。…はぁ。
ピンポン。
…え゛?嘘…、まさか、よ、ね。何このタイミング。
「はい?」
何も考えず返事をしてしまった。
あ。カチャ。
「居た。良かった」
「…どうしたの?」
…え、どういう事か解らない。それに、何故部屋が解ったの。
「無事かどうか気になったから」
「え?」
「あ。ピンと来てないみたいですね」
「え?何が?」
無事?
「今、何か、考え事してます?」
「え?…してる。え、何、どうして?」
「じゃあ、部屋の中で良かった」
「え?」
「フ…。階段から転げ落ちて無かったのならいいんです。転んでも部屋ならマシですから」
「…あ!あぁ」
「そう、それです、思い当たりました?大丈夫だったらいいんです。確認したくてもこうして来てみないと簡単には無理だから」
「え?」
「あ、もう…。いいですか?俺らは連絡先さえ知らないからですよ。ちょっとメールしてなんて事で安全確認はできないでしょって話です」
そうだ…。連絡先も、名前さえ知らない。だから?
「だから…わざわざ?大丈夫なのに…」
ほら、ピンピンしてるでしょ、って、ちょっと胸を張って見せた。
「…みたいですね。…だから、良かったって言いました」
あ、私ったら。気遣ってくれた人に素っ気ない言葉を…。またやっちゃった。