恋?…私次第。~好きなのは私なんです~

「ガンガン来られたらどうする?押しかけたら迷惑だろ?」

「高守さんはしないと思います。許可を取ってからでないと来ません」

「君は狡いな。そう言っておけば私は無理に押し掛けたりしないと思っている」

「はい」

恋は盲目といえども…高守さんは大人ですから。凄く大人な人ですから。

「ま、あ、そこは状況によりけりだから。人としてはいい人で居られても、男としたら、解らないよ?」

制御は効かないって事?は、あ、これ以上は無理。それこそ押され負けしてしまいそう。もう充分攻めが始まってる気がする。

「連絡は頂いたら返します」

ちょっと強気に言って終わらせておかないと。…ちょっと?…私って…何故、ここまで好きにならないようにするような事してるんだろ?…。困ってるの?迷惑だと思ってる?人を好きになるって、そんなに敬遠したい事…?

「有り難う。忘れられないように連絡はするつもりだから。衝動で抱きしめたりするものではないね、抱きしめた君の感触…、香りも忘れられないよ…じゃあ」

あ。…あ、何。何、今の。はぁ。私がかけたんだから、言い捨てて勝手に切ったりしないで。これが狡くなくて何が狡いのよ。もう、ちょっとー、攻めてきてる。最後に印象付けるような事言わないでよね。…はぁ。

ピンポン。

…え゛?嘘…、まさか、よ、ね。何このタイミング。

「はい?」

何も考えず返事をしてしまった。


あ。カチャ。

「居た。良かった」

「…どうしたの?」

…え、どういう事か解らない。それに、何故部屋が解ったの。

「無事かどうか気になったから」

「え?」

「あ。ピンと来てないみたいですね」

「え?何が?」

無事?

「今、何か、考え事してます?」

「え?…してる。え、何、どうして?」

「じゃあ、部屋の中で良かった」

「え?」

「フ…。階段から転げ落ちて無かったのならいいんです。転んでも部屋ならマシですから」

「…あ!あぁ」

「そう、それです、思い当たりました?大丈夫だったらいいんです。確認したくてもこうして来てみないと簡単には無理だから」

「え?」

「あ、もう…。いいですか?俺らは連絡先さえ知らないからですよ。ちょっとメールしてなんて事で安全確認はできないでしょって話です」

そうだ…。連絡先も、名前さえ知らない。だから?

「だから…わざわざ?大丈夫なのに…」

ほら、ピンピンしてるでしょ、って、ちょっと胸を張って見せた。

「…みたいですね。…だから、良かったって言いました」

あ、私ったら。気遣ってくれた人に素っ気ない言葉を…。またやっちゃった。
< 46 / 92 >

この作品をシェア

pagetop