恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
高守さん?
後ろ姿だけど、あの感じは間違いないと思う。平日の昼間に見かけるなんて。これも高守さんの言う、縁っていうモノかしら。
「高守さ…」
あ。危ない。うっかり声を掛けてしまうところだった。誰かと一緒のようだ。
「逢坂さん?」
しまった。声は普通に届いてしまっていたみたいね。振り向かれてしまった。
「あぁ。やっぱり…。驚いたなぁ、こんなところで会うなんて…。嬉しいなぁ」
あ、は、は。どうしようかな。特に用って事じゃないし、いきなりちょっとした話も…用意してなかった。
「これからお昼ですか?」
手に持った財布を見られていた。
「あ…、休憩時間に買っておきたい物があって。お昼はもう済みました」
後ろにはサンドイッチとスイーツ、カップの飲み物が入ったコンビニの袋を隠すように持っていた。私の今からのお昼ご飯だ。
何故、咄嗟に小さい嘘をついてしまったのか。自分でもよく解らなかった。
「そうでしたか。これからならご一緒にと、思ったのですが」
いや、でも…。先程から、そちらで待たれている方もいらっしゃいますし…それは無理というモノ。
「信行?先に行ってるから」
「あぁ、何なら先に食べててくれ」
「も…そういうところよ。はぁ、もう、今更いいけど。追いつかなかったらツケて帰るから」
「ハハ、直ぐ行くよ」
…。
カツカツと、先を急ぐように離れて行った。とても親密な関係性とお見受けしたのですが。仕事関係ではなさそうだし。でも…それはどうなの?…そういう人?
「あの、もう…」
行ってください。待たせてしまいますから。
「あぁ、気にしないで大丈夫だから」
「は、あ。でも」
時間だって無くなるだろうし。
「フ。気になる?」
気になるというか、うん、ある意味気になるかな。
「あの人は、私の元奥さんなんだ」
「え?」
…。
「色んな事が頭を過ったかな?」
…はい。とても…正直、複雑に絡み合っています。
「本当は今からお昼でしょ?私に気を遣って、済んだなんて。時間が無くなってしまうね、もう解放しないとね」
「すみません。つい、咄嗟に嘘を…」
後ろ手に隠していた袋を前にして謝った。
「いや。逆に気を遣ってくれたんだと思っておくよ。今の…気になるなら聞いて?私もあまり待たせると駄目なので。嫌でなければ、いい機会だし、お昼を一緒にと思ったんだけどね。急には無理だったよね。
これは突然の事で約束では無いから。残念な気持ちにはならないでおくよ。では」
先に行ってしまった奥さんを追って駆け出した。真っ直ぐの通り…。
追いついて何やら話している。腰に回そうとした腕を払われた…。奥さん怒ってる…でも二人共笑ってる…。
今の人が奥さん…。ん゛ー。聞かなければ解らなかったと思う。
まるで…恋人みたいに見えた…。