恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「梨央?も~遅かったわね。死ぬほど混んでた?」
「え?そんな事、ない。混んでても大概でしょ?」
「じゃあ、どこで油売ってたの?」
頼まれていた限定のスイーツを袋から出した。
「遅いって…。気になるのはこれを早く食べたかったからでしょ?油は売ってない。知り合いにあったから、二言三言話していただけよ」
「キャ、これよこれ。有り難う。…フフ、頂きます」
蓋を開け、もうスプーンを差し込んでいた。
「…どうぞ」
ウエットティッシュで手を拭いた。袋を探り、取り出すと、カップのストローを引き抜き、ガッっと差し込んで一気に半分ほど飲んだ。
「…はぁ…ふー」
「どうしたの?…鼻息荒い…。その、二言三言、話したっていう知り合いと、何かあったの~?」
「え?どうして?」
「何だか…苛々?それともちょっと違うけど、珍しく様子が変だから。ねえ、これ美味しい…梨央も買った?」
「私は…買ってない」
「一口食べる?」
「…いい。要らない」
「そう?珍しい…。で、どうしたの?聞ける範囲で聞くけど…」
「…話せる事がない」
「そうなんだ」
理解があるのか無いのか…、食べる合間の世間話程度の気に掛けなのか…はぁぁ。
「ちょっと…、溜め息、う、る、さ、いから…」
「ごめん。んー…あのね…」
「うん?」
「一つ言えるのは、美魔女に会ったって事。バリバリのキャリアウーマンでもありそうって感じで。…カッコイイ女性だった」
「ん?第三者が居たの?その人、知り合いじゃないでしょ?」
話を映像化にしてるのかな。ちゃんと聞いてるみたいね。
「ね。知り合いって男性?でしょ。そうでしょ」
「ま、あ」
「その男性と訳あり?」
スプーンで指された。
「そんな…、大層な事は…」
無い…。ちょっとある?…いや、まだナイ。…訳アリでは無い。
「別に私鋭くないよ?どちらかといえば鈍感じゃん?他人に無関心だし。でも…。普通さぁ、話した相手との事、言うじゃん。梨央はそうじゃなかった。気になったのは美魔女の方って事でしょ?
……それ、無意識の対抗意識よ、多分」
「え?」
「…ウフ、はぁ美味しかった。ご馳走様でした。ちょっと、コーヒー買ってくるね。あ、代金、払わないとね。後でいい?」
「…あ、うん…」
充分、鋭いよ。対抗かどうか、そこまではだけど。意識はした、と思う。
元とはいえ、今もあんなに仲良しというか、何年も連絡を取ってないような関係性には見えなかった。むしろ、とても親密って感じ。それは色々あって離婚しても、昔からお互いをよく知っているから?…かな。高守さん達が特殊なのか、それが普通なのか…。
そんな関係性、結婚も離婚も経験の無い私には想像だけで合点がいくかも解らない。