恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「高守さん…て、あれ?」
居ない。え?居なかったの?
「…こっちだよ」
大きく開け放ったドアの向こうから顔を出した。
「あ」
「入るよ」
あ。
抱しめられた。
「嫌いじゃないなら抱きしめたいんだ…」
ドクン…ドクドクドク……。覚えてる、この感じ…。
「私は…嘘つきだよ」
「え?」
「…すまない。寝ている君を抱きしめたのは私からだったんだ」
「え?」
「それを、君が言ったと…、君に求められたからだと、嘘をついた」
あ、あぁ…。そうだったんだ。
「嘘つきだと、信じてはいけない男だと、がっかりした?
…抱きしめたかったからだ、一緒に寝ている君を見て、どうしても抱きしめたくなってしまった。
これ以上の嘘はない。もう、私の言葉に信用は無いだろうけど、……信じてはもらえないだろうが、嘘はそれだけだ。…はぁ」
…。
「やはり、気持ちの差、温度差はあるようだね。…知り合いになって、もう…友達にもなれない。初めから友達になりたい訳じゃないから。
お昼に君に会って、その後で、聡子、元妻が言った。もしかして、今の人、好きになってるの?ってね。だから急にランチでもしようって私を誘ったの?ってね…。
侮れないだろ?…私を知っていると、ちょっとした目線、態度で簡単に読み取られてしまうんだ」
それは当たり前の事だと思う。
「…それだけ、高守さんを見てるって事にもなります。嫌いになって、別れた訳じゃないんじゃないですか?今だって、好きなんじゃないでしょうか」
「それは…」
「そうなんじゃないかって、お互い、意識はありますよね?…きっとそうです」
「…しかし」
「知りませんよ?お二人の性格だとか、全く知りませんから。…終わりにした理由…好きだけど、嫉妬したんじゃないですか?仕事に。すれ違っただけなんじゃないですか?多分、奥様は仕事を優先してしまったから。
……すみません。お二人の関係がどうだったか、何も知らないのに」
高守さんの事だって解らない…。
「ふぅ、そうだね」
「私は、奥様の代わりにはなりませんよ?」
あぁ…何かを埋める為に、好意があると言ったのかも…。
「…思い違いをしている。私達は、今更…。もう、とうに終わってるんだ」
「でも、雰囲気は凄く良かったです。…何でも知ってるって顔をしてましたよ?私なんか、牽制するような目で見られました。一瞬ですけど」
「それは」