恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
で、それからの今だ。

「んー、今日は、まだ早いって、何か力が働いたのかな。梨央に、慎重になる時間を作ったのかも知れない。後悔しない為に?
方や、口では押え気味で実はやる気満々のオヤジ、方や、そんなオヤジに心が揺れ始めてくれたばっかりの梨央だ」

「高守さん…」

いいんだ。こればっかりは仕方ない事なんだから。そういって肩を抱き寄せられた。…ごめんなさい、こんな…台無しになってしまって。タイミングが悪くて。暫くは無理になりましたね…。

「それより、よく解らないんだが、痛くはないのか?聞いた話だと、腰とかお腹とか痛いんだろ?大丈夫?辛くないのか?男にはよく解らなくてな…。頭は?頭痛はないのか?」

「…え?あ、はい、大丈夫です。長いつき合いですから、毎回、こんなモノだって、やり過ごしてます」

お解りでしょうか。私は突然のアレに見舞われました。そう、毎月のお客様、…生理です。だから今回、高守さんとはまだ…ってことになった。

「どうしたらいい?腰とか、擦ろうか?あ、腰って言っても、これは、いやらしい気持ちじゃないからな?」

背中にあった腕がやや下に下がり、ゆっくりと上下に撫で始めた。お腹、手を置いて温めた方がいい?とも聞かれた。

何だか…癒される。こんな気遣い、された事なんてないし。

「優しいですね。気持ちも楽になります」

腰をずっと擦ってくれていた。

「そうか?んー、それなら良かった。逆に鬱陶しかったら止めるから言ってくれよ?」

「はい。鬱陶しくなんかないです。…いやらしいとも思ってませんから。…フフ」

気を遣ってくれてる…奥さんにも毎回こんな風にしてたのかな。どうなんだろう。…何だか急にモヤッとする。考えなくていいのに。意識するなんて。…ちょっとだけ胸に顔をくっつけ直した。これって…何?…もしかしてこれはヤキモチなのかな…?

「ん?どうした?」

「…ちょっとだけ…甘えてみました」

更に目の前のシャツをギュッと握っていた。

「ん?…どうした…。やっぱり辛いのか?」

首を振った。ゆっくり撫でる手は止まって腰にあった。その手は温かかった。

「ちょっと、内面の問題です」

奥さんの事、こんな風に優しく労って…そして…。あー、今考えても仕方ない事、夫婦で何があったとしても、過ぎた事は変わらないのよ。
甘い時は数え切れないくらい過ごしていて当たり前の事なんだから。
首を振った。
< 64 / 92 >

この作品をシェア

pagetop