恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
【日曜日の三時くらい、どうだろうって事なんだけど。どうかな】
来た。とうとう会う日が来てしまう。
【はい、解りました】
【場所は〇〇駅ホテルのラウンジで。こっちは一緒に行くから、来てくれる?大丈夫?】
【はい、解りました】
【緊張しなくていいからね。顔を会わせるだけの事だから、時間にしたら一瞬くらいのモノだよ。アイツは直ぐ帰るだろうから】
【はい、大丈夫です】
忙しくて、なのかな。それとも…私なんかはどうでもよくてなのかな。
【ハリネズミ、大人しくて可愛かったね】
【はい。触られ慣れてるんですかね。元々大人しい子なのかも知れませんね。手の中で丸まってじっとしてましたね】
【相手なんか選べなくて、人によっては随分賑やかに触られたりもするんだろうね。そう思うと可哀想だよね。ほら、最近はところ敵わず写真も撮ろうとするから。その為に来てるような子もいたじゃないか】
【そうでしたね】
【店も商売で、そういったモノも良しとしないと成り立っていかないのかな。人間が一番の我儘だからね。私達も客の一人なんだけどね】
【難しいですね】
【梨央?】
【はい?】
【気が進まないようなら無理にとは言わない、断ってもいい。でも一度会っておけば、その、なんて言うか、煩く何かとされなくて済むと思うんだ】
それは解ってるつもりです。いくら今は関係ないと言っても、元夫の好きになった人って存在自体は気にはなると思うから。解ってます。
【大丈夫です】
きっと私のメールの口数の少ないところから緊張してると察したんだ。
【緊張してないと言ったら嘘になりますが、これは緊張して当たり前だと思ってますから】
だって、元とはいえ、高守さんの奥様だった人…。なまじ、人物の容姿を知ってしまったから…。面と向かったら、きっと圧倒されてしまうだろう。それも仕方ない事。私は私だ。急にいい女に変われないし変わりようもない。
どんな人か、何も知らないままだった方が良かった。
【自己紹介の練習をしておきます】
実際、名前以外に言える事はないと思う。逆に質問されてしまうのかな。
高守さんのどこがいいのかって。
…私、その質問に答えられるだろうか。だって、何も知らない。