恋?…私次第。~好きなのは私なんです~

はぁ。約束の時間よりかなり早く着いてしまった。

どうしよう、予約はしてないみたいだし、ここら辺りで待ってようか。それとも構内の店舗でもブラブラしてようかな。変に見入って反対に遅れたら駄目だから止めておこうかな。…はぁ。

…弁護士さんか。
きっと今日も颯爽としてるんだろうな。スーツ姿が格好良くて、とにかく綺麗な人だった…。仕事が忙しくて、もしかしたら、今日だって時間に追われるような中を来るんじゃないだろうか…。私みたいに休日にボケーッとする事なんて無いのかも知れない。人の顔つきで解るモノだ。きりっとした顔をしていた。本当に憧れるような人だった。
どこか意識して、…敵うはずもないのに、甘めの恰好では無く、頑張って、少しカチッとした服装をして来たつもりだ。…顔を会わせるなんて…結婚を決めた相手でもない。…結婚て…するんだろうか…。考えての事だろうか。高守さんは一度…駄目になってる。私とはどんなつき合いをしたいのだろう…ただ好きな人って、紹介されて。それでいいんだろうか。
二人で一緒に来るなんて…また、あの雰囲気を見る事になるんだ…。

…はぁ。やっぱり…ごめんなさい。まだ間に合うかな…。

【すみません。具合が悪くなりました。申し訳ないのですが、今日の約束はキャンセルさせてください】

具合なんか悪くない、急に臆病風に吹かれたんだ、これは逃げたんだ。

【大丈夫?こっちは一緒じゃ無いんだ。何だか、直接行くって言い出してね。中止にする事は連絡を取るから大丈夫だよ?それよりどんな具合?大丈夫なの?】

どんな具合かは言えない。だって症状は無いんだもの。しいて言うなら"臆病"という病です。

メールに返事はできなかった。

待ち合わせの場所からは遠くなるように急いで離れた。
それからは何となく、トボトボと歩き始めた。情けない、会うくらいの事、出来ないなんて…はぁ…帰ろう。そうだ、帰っておかないと。
携帯がずっと震えていた。

ドン。

「あ、ごめんなさい」

足元ばかりを見て前を見てなかった。

「いや、こちらこそ、急いでて避けられなくてすみませんでした。あ」

「…え、あっ」

また、会った。

「…よう」

「よう。じゃない、どうしたの?こんなところで」

休みの日じゃないのかな。

「え?どうしたって、何言って…。そっちこそ、こんな場所で…誰かと待ち合わせ?」

わざとらしいくらいキョロキョロしてる。どうやらきちんとした格好から判断されたみたい。

「うん。だったけど、無くなった」

「え?無くなった?へぇ…。せっかく綺麗目な格好なのに、相手は見られなくて残念だね」

何?それって、その言い方だと、男の人と約束してたって思ってるんだ。まあ、半分は合ってるけどね。

「は、ぁ。そっちだって、ちょっとちゃんとした格好してる。デート?記念日とか、誕生日とか」

「…どれでもない…。あ、ちょっと待って」

携帯を見てる。

「はぁ。…キャンセルね。…なる程」

「え?どうしたの?」

「あ、うん。急遽、中止だって」

「そうなんだ。残念ね」

「…フ…。残念ていうか。まあ、どうでもいいって言えばどうでもいい事だったから。ん゛ー、無し無し」

腕を上げて伸びをしてる。どうでもいい?そんな言い方…。

「ちょっと。どうでもいいは良くない言い方じゃない?どんな約束かは知らないけど、待ち合わせてたんでしょ?」

「え?そうだけど…、別に…、元々会いたくも無かったし。それに向こうだってドタキャンなんかしてくるんだから、余程気が進まなかったんだと思うよ?」

会いたくない人と会う約束…?
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