恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
生きてきた人生で最大の気まずさだ。
…仕方ない。自分で蒔いた種は自分で刈り取らないといけない。
「ごめんなさい。今…、直ぐ開けます」
「梨央、一体これは…どういう事なんだ?外で具合が悪くなったのか?」
心配そうな顔で見られた。
「ごめんなさい。とにかく、中で。入ってください」
高守さんを避けるようにドアとの間に入りガチャガチャと慌てて鍵を開けた。
「梨央…」
ドアノブを握った腕を掴まれた。…あ。
「ちゃんと話します。とにかく、中に…」
「…あぁ」
手は放された。
「…どうぞ」
「う、ん」
中に入った高守さんは、緩めてあったネクタイを更に緩めながら、ソファーに唸りながら腰掛けた。
「今、冷たい物を…」
「いや、いいよ。座ってくれるか」
「…はい」
ポンポンとされた隣に少し距離を取り腰を下ろした。もう、仮病だってばれているだろう。
「はぁ…さて…。メールは返して来ないし、何度連絡しても、どうやら出る気はなさそうだったし。具合は?悪くないのか?それとも、もう良くなったのか…梨央、私は別に…無理に会って欲しいとは思って無かったんだ。無理なら無理と初めに…」
「ごめんなさい、大丈夫だと思ってたんです。本当にごめんなさい。…私が悪いんです。普通に、会えると思ってたんですけど、いざ、ラウンジに着いてしまったら…。色々考え始めてしまって。…敵わないって思ったら、逃げてました。本当にごめんなさい、高守さんの顔に…泥を塗るような事…」
私…高守さんから逃げてばっかり、してる。不倫だって思い込んだ時も…。
「…敵わない?」
「はい。到底敵いません…」
「んー…何を意識したのか解らないが、敵わないというのは妻の事なのかな?それなら終わってる事だ。今は関係ない。言っただろ?…そもそも、今でもいいと思っている関係性なら、別れてなんかないだろ?それが、とうに別れてるんだから、言いたい意味は解るよね?
彼女は彼女で素敵な人だけど、私とは合わなかったんだ。チラッとだけ見掛けた彼女を、梨央が素敵な人だと思ってくれたのは間違いではないと思っているよ?確かに素敵な人だ。でも、私とは終わった人だ。
昔は夫婦だった。それは変えられない事実だから、どうしようもできない事だ。
…具合は悪くないんだね?本当に大丈夫なんだね?」
「は、い。全く問題ないです…ごめんなさい」
「はぁ。なら良かった。連絡も出来ない程あれから急激に悪くなったのかと思った…。だけど、来てみたら居ないようだったし。元気なら良かった…良かったよ…。
では…、帰るよ」
そっと頭に手を置かれた。
「…はい」
ごめんなさい。
「あ、別に怒ってなんかないから、仕事でだってドタキャンはあるから気にしないでくれって、偉そうに言ってたよ。どうする?リベンジする?それとも、もう止めておくかな?」